Nowadays, they don’t date, but they hang out
もうすぐ16歳を迎えようとしているボクの娘に、同い年のボーイフレンドができた。
この夏参加したビーチバレーの合宿とトーナメントで、二人は仲良くなった。バレーでコンビを組む娘のパートナーが、このボーイフレンドの従兄のガールフレンドという関係である。そして、この従兄の父親が、ビーチバレーのコーチなのだそうだ。やっぱりこの世界は狭い。
娘のいうところによると、実は彼女は、ずいぶん前からこの彼のことを気に入っていた。彼女は、去年の夏、小さな子供たちに自転車の乗り方を教えるアルバイトをしていたのだが、どうやらそこで初めて知り合ったらしい。娘の友人たちの間には、彼女が彼を気に入っているので、「あの彼には手を出すな」という暗黙の了解ができあがっていたたようである。ところが、二人ともシャイで、なかなかきっかけがつかめず、ずるずるとこの夏まできてしまった。それがようやく最近になって、どちらもちょっとずつ勇気を出し合ったことで、一緒になれたということらしい。
初めて恋に落ちた娘の行動を観察していると、なんともいじらしい。
電話番号やメールアドレス(こちらではtextingという)を交換したあと、ずっと携帯を握り締めて、相手から連絡が来るのを待っている。そして、連絡が来たあとも、すぐ返事をすべきかどうか、ああでもない、こうでもないと自問自答している。ほかの友達たちから、「カップルになったのか?」というメールの問い合わせが殺到し、親友と「いったい誰が言いふらしているのか」と、これまたああでもない、こうでもないと詮索している。そうした「ああでもないこうでもない状態」が、一日中、延々と続くのである。
はじめて彼から「オヨバレ」がかかったとき、ボクは娘に「どこでデートするんだ?」ときいた。そしたら、最近の若い人たちは、二人きりのデートというのはあまりしないのだそうである。デートではなく、ハングアウト、つまり何人かの仲間たちと一緒にいる中で楽しむのである。二人だけでなく、仲間のネットワークの中で関係を築いていくということなのであろう。
というわけで、その最初のハングアウトは、ビーチバレーのコーチの家であった。
プールもあるし、テニスコートもあるし、ビリヤードテーブルもある。ハングアウトするには、まさに最高の環境らしい。
ボクが車でその大邸宅まで送っていくと、途上、娘はそわそわしはじめた。鏡で何度も化粧を直している。鏡を閉じたり開いたりして、「ああ、緊張してきた」とため息をもらす。
「緊張?何で?」
「だって、こんなに男の子のことを好きになったの、はじめてなんだもん」。
そうか、そうだよな、そうに決まっているよな。
そのピュアな心にうたれ、思わずほほえむ。そして「Good Luck!」と、送り出す。
娘の門限は、深夜の12時。
あとからきくと、彼はちゃんと彼女を家まで送り届けてくれたそうである。車を運転できる年齢ではないので、二人はバスを乗り継ぎ、歩いて帰ってきた。そして、彼は自分の家まで、またバスを乗り継ぎ、歩いて帰っていったそうである。