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2007年06月24日

日本語になりにくい英語

最近論文を翻訳する機会が多く、そのたびに日本語になりにくい英単語に苦労している。で、いつかそういう単語をAからZまでひとつずつ集めて「訳しにくい英単語集」という本でも出そうかと思っているのであるが、まめにメモを取ることをしないので、いっこうにそのリストが完成しない。しかし、今日はそのリストの候補になると思われる単語をここにちょっといくつか並べてみようかと思う。あとで付け足していってもいいしね。
まず、Aはというと、これは結構候補を挙げることができる。たとえばavailable。あるいはその名詞形のavailability。これがどちらもなかなか訳せない。「ありえる」とか「手に取ることのできる」とか訳して通じるときもあるが、それでもピッタリ感がない。「利用可能な」と訳したりするときもある。Are you available on Sunday?は「日曜日、お暇ですか」とか「ご都合つきますか」と訳さなければならない。Is she available now?を「彼女って、いまカレシ募集中?」と訳さなければならない場合もある。
Aのもうひとつの有力候補はalternative。いつかゼミ生たちにからかわれたことがあるが、どうもボクは授業中にこの言葉を「オルターナティヴ」とカタカナ読みにして、すでに結構使っているらしい。これを「もうひとつの選択肢」とか「代替案」とか訳しても、ピンとこない。外国のCD店にいくと、「ちょっと変わった趣味の」とか「めずらしい」とかいうジャンルの音楽を指す場合にも、この言葉が用いられている。いい加減日本語にしてもいいのではないか、と思うくらいの単語である。
Cの有力候補はcool。もうこれはクールと訳すしかない。He is so coolは、「カッコイイ」や「素敵」では、全然通じない。日本語の「カッコイイ」とか「素敵」という言葉は、下から上へ見上げているような眼線にのっている。これに対してcoolは、対等な相手に対して「アイツいいやつだよ」という感じで使われるし、そのように自分も努力してなりたいというようにあくまで対等感が暗黙にこめられている。
Cでは、civilという言葉もある。政治学では「市民の」とか「市民的な」と訳されるが、これではまったく通じない場合がある。たとえば、喧嘩をしたあとの友人同士や離婚したあとの元夫婦の関係がcivil to each otherであるというのは、再び会う機会があっても取っ組み合いや引っ掻き合いに発展するのでなく、すくなくとも対話が成り立つ程度には穏やかである、という意味である。そうそう、これと似たような意味で使われるbehaveという言葉も、なかなか訳せない。そうした再会の場で「did he behave?」というのは、「わきまえた行動をとっていたか」という意味である。これを辞書通りに「行動したか」と訳したのでは、わからない。
Oblivious。これも、なかなかいい訳が浮かばない単語である。「忘却している」なんて辞書通りに訳したら、意味がまったく伝わらない。She is so oblivious to everyday lifeとかいうと、「世事に疎い」とか「浮世離れしている」とかいう意味(大学教授みたいに?)である。幼い子供たちが、まわりにある危険を顧みず、一心不乱に道路の真ん中で遊んでいたりする様子も、この言葉で表現できる。こういうと、純真さをイメージするかもしれないが、そればかりではない。とんでもないマイペースでまわりにまったく気を使わない人を、oblivious to others とかいうこともできる。電車の中でマナーのない人をみると、ボクは「ミスターオブリヴィアス」とか「ミスオブリヴィアス」とか呼ぶことにしている。これ、流行らせたいなあ・・・。

2007年06月22日

Erratum

このブログを読んでくださっている方々の中には、親切にも、ボクが書いたことの間違いをいろいろ指摘してくださる人がいらっしゃる。今日は、いくつかそういう項目がたまったので、erratumを書こうと思う。
まず、ある方から、ニューヨークにあるwhole foods marketについての説明が間違っているのではないか、とご指摘を受けました(4月4日付け「マーケット」)。その方によると、あれはコロンバス・サークルにあるのであって、(ボクが書いたように)リンカーン・センターの地下にあるわけではない、とおっしゃる。で、たしかにホームページで確認すると、コロンバス・サークル店ということになっている。こういうところに気付くこの人、さっすがだなあ・・・。ただ、ま、リンカーン・センターにも近いと思うんですけどね。おそらく、車で行くときには、コロンバス・サークルを目指して行くということになるので、混乱させてはいけないわけですね。申し訳ありませんでした。ただ、徒歩だったら、セントラル・パークを散歩した帰りに立ち寄るのに絶好の場所であることは間違いありません。みなさんも、どうぞ利用してください。
第二に、別の方からは、6月13日付けの日記(「Ipodの微妙」)のアイポッドの表記は、小文字のipodでなければならない、とご指摘を受けました。へー、そうなんですか。ボクは、まったく知りませんでした。こういうところに気付くこの人も、すっごいなあ・・・。こういうのは商標とかいろいろ問題がありそうなので、大変不注意であったことを反省しております。この場をお借りして、陳謝いたします。失礼致しました。
第三に、2006年11月3日付けのブログ(「ある日の出来事」)の中で出てくる院生さんのお名前は、表記の「足立さん」なくでは、正確には「安達さん」でした。これも、大変失礼な誤りで、しかも長い間訂正せず、申し訳ありませんでした。
第四に、これは間違いといえるかどうか、結構微妙なのですが、2006年5月12日に書いた日記(「銀座ライオンとギネスの話」)の中で、このビアホールの圧倒的な多くの客がサラリーマンとOLであるという一節に異論を唱えた方がおられました。その方は「サラリーマンは、あんなところでは飲まない」と言い張られる。「あんなところ」というのは、「あんな高級なところ」という意味なのです。「河野さん、ダッメだなあ。これだからダイガクキョウジュは浮世離れしてて困っちゃうんだよ。蝶ネクタイつけたボーイさんがいるところで、ふつうのサラリーマンが飲むわけないでしょ。ジャーマンポテトなんておつまみがでてくるところで、ふつうのサラリーマンが飲むわけないでしょ。われわれは、ね、ふつう立ち飲みですよ、立ち飲み。で、出てくるのは、ホッピー。そういう世界なんだから・・・」うーん、これにはコメントしようがないです。この方は、もともとの嗜好からして、B級やC級グルメのような気もする。ただ、大学教授が「浮世離れしてる」ってくだりには、おおかた同意いたしますです、ハイ・・・
さて、ということで、これからも間違った内容や表現を使わないように気をつけますので、どうか末永くお付き合いください。

2007年06月15日

続・合宿でのスポーツ三昧

この前の週末、軽井沢へゼミ合宿に行ってきました。
いやー、すばらしい合宿だったね。今年は2泊したせいでスポーツも勉強も充実しまくり。3年生と4年生の親睦も進んだし、ボク自身、普段あまりしゃべる機会の少ない学生たちと話すことができて、本当に楽しかった。(以下は楽しかったことの抜粋です。)
まず、一日目(土曜日)。朝7時に、木村君、上河君、西山君の3人がジョギングへ行こうと、グリーンハウスまで迎えにきてくれた。小雨が降っていたが、すがすがしい緑ときれいな空気の中を走って、とても気持ちよかった。
朝食を済ませて、午前中はテニス。かねてから「先生とテニスしたいんです」といっていたプリンス小林君はゼーンゼンたいしたことなかったが、小兵茶髪マイペースの森田君の変則サーブにはチトてこずった。雨宿りのつもりで「体育館」へ行ったら、お世辞にも「体育館」とは呼べない小さな建物で、ちょっとがっかり。ところが運良くその時雨が小降りになったので、すぐさまサッカーをすることにした。ボクは4年生チームに入った。しかし、長髪をピンで留める(ところがどうしても気になる)風間君のめざましい活躍などで、負けてしまった。
午後は、バレーボールをした。これが、最高におかしかった。声だけはイッチョマエに出すくせに、何度やっても勝てないチームがひとつあった。このチームは、他チームが試合をしているときにも、影練をしている。その時も「ヘイヘイー」とか「おーいいね、いいよー」とか、うるさいのなんの。そして、土下座して「もう一回」と他チームに懇願してまわり、ようやっと相手にしてもらっていた。ところが、この「声だけ」チームは、それでもさっぱり勝てなかった。
夜の飲み会の前には、大貧民ゲームをやった。ボクは、大富豪になったら勝ち続けないとその座を追われるというルールがあることを知らなかった。そのルールのせいで、誰も3回以上大富豪の地位を守れない。しかしボクは着々と貧民から平民、平民から富豪、そして大富豪へと出世し、そのあと最後までその地位から引きずりおろされることがなかった。(このことを後で友人に自慢したら、学生たちが気を使っていただけだといっていたが、そんなことはなかったと思う。)
二日目(日曜日)は、ソフトボール。この時も3年生チームが4年生チームを圧倒した。それで、4年生たちが、どうしてもサッカーでリベンジをしたいということになって、もう一度サッカーをすることになった。この試合は本当に緊張感あふれるいい試合となった。結局、この日から参加の山下君の華麗なプレーなどで、4年生チームが一矢を報いた。
合宿では、面白い発見がいろいろある。去年はまったく猫をかぶっていた細谷君が、アメリカ帰りのせいか、自分が上級生になったせいか、今回は異様に溌剌としていた。奥村君が、自分とキャラがかぶっているのではないかと、後輩の山内君を妙に警戒していたのも面白かった。飲み会の席では、男子学生たちが女子学生たちから女の行動心理についての、そして女子学生たちが男子学生たちから男の行動心理についてのアドバイスを、それぞれいろいろ聞きだそうとしていて、微笑ましかった。
今年もいい学生たちに出会え、またひとつ輪が広がった。感謝したい。

2007年06月13日

Ipodの微妙

このあいだもチラリと書いたが、Ipodをよく利用するようになった。CDを移すのに、時間がかかり、結構めんどうくさい。でも、いろいろな作業の片手間にちょこちょこやって、ようやく400曲以上を登録した。
このあいだ調べたところでは、いちばんよく聴いている曲はストーンズのJiving Sister Fannyであった。あと、同じくストーンズのHonky Tonk Women、キャロル・キングのTapestry、セロニアス・モンクのBlue Monkと続き、おなじみジョニ・ミッチェル、ボブディランなども上位を占め、意外にもベートーベンの弦楽四重奏曲とかワーグナーの序曲集とかクラシックも善戦していた。
Ipodを身につけるようになって、自分自身の中で、時間の感覚が変った。
以前、駅のプラットフォームで次の電車が来るまで3分もあると、すごく長く感じた。しかし、3分というと、実はどんなCDの1曲よりも短い。電車を待つ間に1曲をまるごと聴き終わることはまずない。それから、東横線の終点から終点、つまり渋谷から元町・中華街まで乗ると40分ぐらいかかるのであるが、これでもアルバムひとつを演奏するのには時間が足りない。いかに普段、自分が生き急いでいるかがわかる。
もちろん、好きな音楽を好きな時に聴けるというのは、とてもありがたいことである。ボクの場合、耳栓のように中にはいる小さなイヤホンを使っているので、音漏れするようなこともなく、まわりに迷惑をかけていることはない、と思う。
しかし、その一方で、Ipodを愛用することには、マイナスの部分もあるかな、とも思う。
まず、Ipodを利用するようになってから、家に帰って静かに音楽を聴くことのありがたみが減ってしまったような気がする。前は、家に帰ってから「さて今日は何を聴こうかな」と考えるのがささやかな楽しみであった。しかし、帰りの電車でもずっと好きな音楽を聴くことができるようになって、家であらためて何かを聴こうという気がなかなか起こらない。これは、とっても寂しい。
それから、Ipodで音楽を聴いていると、ボクの場合困ったことに、膝とか踵とかが自然と動いてしまう。つまり、しらずしらずのうちに身体が調子をとっているのである。これは外からみるとどうもみっともない、という気がする。「見ろよ、アイツ、年甲斐もなく、ノリノリだぜ」などとささやかれているのではないか、と心配になる。もっとも、Ipodを聴いているボクには、当然のことながら、そんな陰口は聴こえてこない。そうそう、Ipodには、他人からの眼線に対して、鈍感になるという効能もあるように思う。
先日、はじめて音楽ではなく、落語のCDを一枚入れてみた。古今亭志ん生の「あくび指南」、「まんじゅうこわい」、「強情灸」が入っている一枚である。ボクとしては、リラックスするためにいいかなと思ったのであるが、これは失敗であった。落語のCDを電車の中で聴くのは、かなり勇気がいる。しらずしらずのうちに、にやにやしてしまうのではないかと心配になり、リラックスどころか、歯を食いしばって聴かなければならないのである。