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小沢さんの影響力

26日に判決が予想される小沢さんについて、コメントして下さいといわれたので、考えをまとめてみます。
まず大前提として、小沢さんという人は非常にスタンダードなというか、わかりやすい行動をする政治家だと、ボクは基本的には思っています。彼は自分のおかれている境遇、自分に与えられている試練、すなわち自分に与えられているすべての素材を、ポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、すべて将棋の持ち駒のように、あるいは碁石の配置のようにとらえて、その時々で最適な戦略を取るということを、いつでもつねにしている人です。
さて、目下のところ(というか、このところずっと)小沢さんが直面している戦略上の選択肢は、究極的には単純な二者択一で、すなわちそれは既存の民主党をのっとるという形で復権をはかるか、それとも民主党を離れて新党をつくり、バーゲニングパワーを握るような形で復権をはかるか、のどちらかです。もし他の条件が同じであれば、その二つの戦略に二分の一ずつの確率でヘッジすることになりますが、どうもいまはそうは行かないのではないでしょうか。というのは、まず後者の新党構想の可能性を考えると、この実現性を高めるシナリオは、ひとつには、国民新党を離党した亀井さんと連携し、さらには橋下さんや石原さんを巻き込んで流動的な政局を作り出していこうとするというものですが、これはいまのところまったくうまくいっていません。より現実的なもうひとつの可能性は、自民党と民主党がそれぞれ割れ、大きな政界再編が起こることです。これは、たとえば、いまの民主党の(野田首相の)非常にしたたかな「のらりくらり」路線に自民党がしびれを切らし、その一部が消費増税に賛成にまわり、自民党の中で反増税や反TPP勢力が民主党の中の同じような勢力と連携していこうということになったときに起こるシナリオです。こうなれば、小沢さんにもう一度チャンスがめぐってくることになります。
これに対して、もう一方の、民主党の中に残り復権をはかるという戦略は、いろいろな意味で行き詰まってしまう戦略にしか思えません。第一に、そのようなシナリオは、現政権に対する支持率が下がり、民主党内でふたたび「小沢待望論」のようなものが盛り上がってくることを意味しますが、なかなかそれは起こるとは考えられない。おそらく、小沢さん自身もそのように気づいており、そして小沢さんが気づいているということを、民主党の他の人たちも感じとっている、と思います。
そして、非常に重要なポイントですが、小沢さんはよく数を握っているといわれますが、その多くの小沢チルドレンたちは選挙基盤がきわめて脆弱な人たちです。もし、彼らが次の選挙における再選の確率を上げることができるとすれば、それは民主党に残ることではなく、民主党に見切りをつけて、選挙直前に民主党を飛び出し、反民主の無所属で次の選挙を戦うことだと思われます。こうした人たちの動きを、小沢さんが食い止めることはむずかしく、それゆえ、小沢さんの二つの戦略のうちの一方は、そもそも現実となる可能性が低いのです。
ということはどういうことか。小沢さんには戦略が二つあるようで、実は一つしかない。いってみれば、彼は、自民党を巻き込んだ政界再編に賭けるしかないように思えます。それは基本的に他力本願であり、その意味で彼の政治的影響力、彼が政局を左右する力は、現在においてはそれほど大きくないと考えるのが、正しいのではないか、と思います。