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(続)談志師匠のマクラのように語る

ええー、まったく、最近は能書きが多い店ばっかりですね、ホント。いちいち、説明にきやがるんだ、これはドコトカでとれたナントカです、とか、このお肉はあちらのソースと合わせて召し上がって下さい、とか。あのさぁ、レストランってのは、緊張するために行くところじゃないんだ。うまけりゃ、それでいいってもんじゃないんだ。ゆったりと、雰囲気を楽しむって場合もあるってこと、分かんないのかね。
ま、本当に一流のシェフ、特にオーナーシェフは分かってる、うん、分かっている、と思いますけどねぇ。でも、これが個々のサーバーのレベルまでおりてくると、転倒しちゃうんだな。そう、自分の店でもないくせに、態度が「これから説明してあげるから」とか、「ほら、うまいでしょ、ウチ」みたいな、自分たちが自己満足に浸るためにあるかのような構図になっちゃう。
いや、この前もね、ウチのかみさんの誕生日だったんで、あるレストランに予約して、行ったんですよ。ところが、メニューみても、なにひとつわかんないわけ。これは、うん、笑っちゃったね。
ちなみにその日のメニューは、<山形牛サーロインのスピエディーノ><フォアグラのパスティッチョと無花果のコンポスタ><鮮魚のヴァポーレ><ストロッツァプレッティ ボルチーニとアンチョビ><バッカラとサフランのマンテカート 雛豆のプレア><鮪とパプリカのクッキアイオ><トルテッリ 山鶉のリピエーロ クレマ ディ トピナンプール><鹿のロースト サルサ リクリツィア><栗のムース コーヒーのグラニテ>。
どうみても、このメニュー、普通の客を「田舎もん」扱いするためのものとしか思えない、でしょ。この中に説明きかないで分かるもの、ひとつでもある?えっ?ボルチ―ニとアンチョビは分かりますって?ばか、オレだってそのぐらいは、分かるってばさ。
あのぉ、たとえば、スピエディーノってのは、ですね、イタリア語で、串刺しって意味なんだそうです。じゃ、<山形牛サーロインの串刺し>って書きゃいいじゃんかって、オレなんか思う。そう書いてあるほうが、よっぽど、気取ってなくて、お洒落なんじゃ、ないんですかねえ。
いやね、実はお洒落っていうのは、だね、ちょっとでも「気取る」とか「気負う」とか、そういうところがみえたら、おしまいなんですよ。だから、逆にいうとね、お洒落な客は、きっと、このスピエディーノって言葉が分からなかったら、サーバーにきいちゃうと思うよ。これって、どういう意味なんですかって。で、その時に、そのサーバーの方が、気負うことなく「いやあ、串刺しのことなんですよ」って、さらりといってのけられるか。これが、一流のレストランかどうかを分けるポイントになるんじゃないか、とオレは思うね。

談志師匠のご冥福をお祈りいたします。