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2011年06月12日

山口那津男代表との小さな論争、そして民主主義に対する責任について

先日、あるテレビ番組で山口那津男公明党代表とご一緒させて頂いた。山口さんにお会いするのは、これが二回目である。ボクは、それほどたくさんの政治家を知っているわけではないが、山口さんは本当に立派な政治家であると思う。人と相対するとき、相手の目をしっかりと見すえて、真剣に話しをする。待合室でも、スタッフひとりひとりに対し敬意と礼節をもって接する。伝統ある公党のトップであるのに、偉ぶったところが全然ない。若い頃からちやほやされたためか、自分が世界の中心だと思い込んでいるのか、周りにまったく気配りのない、どこかの政党の誰かさん(←さて、誰でしょう?)とはちがう。
しかも、山口さんは、いつでもどこでも、自分の信じるところに基づいて、きわめて理路整然と主張を展開する。論争相手としては、きわめて手ごわい。国会の党首討論で菅首相をやり込めているところをテレビ中継で見た方も、たくさんいるのではないか。今回ご一緒させていただいた番組でも、ひとつひとつの発言は短いのだがメリハリがあり、きちんとしたメッセージがこもっていた。もちろん政治家であるから、政治的な発言をすることもあった。しかし、そうした発言でさえ、山口さんの場合は、筋が通っている、というか、スキがない、というか、それぞれ相応の根拠をもった発言となっていた。
今回の番組では、その山口さんに、ちょっと論争を挑んでしまった。百戦錬磨の相手に論争を挑むこと自体、無謀であったわけだが、案の定、ボクの方が分が悪かった。リアルタイムで見ていたボクの母などは、「アンタ(←ボクのこと)、ツッコもうとしていたけどカンでたでしょ。ちょっとみっともなかったわよ」と、厳しい評価であった。
では、その論争とは何だったのか。ボクは結構重要なことだと思うので、番組の中でうまく言い尽くせなかったことも含めて、以下に書いてみる。
山口さんは、菅首相の退陣が決まった以上、第二次補正予算は、新しい政権のもとで組まれるべきだと発言した。(ボクもそう思う。)しかし、山口さんは同時に、(菅首相が辞めるとか辞めないとかに関係なく)公債特例法案については、民主党が予算の中身を大幅な見直しをしない限り(参院で)賛成することはできない、と発言した。ボクは、それはおかしいといい、(公明党を含めて)今の野党は、今年度の予算の裏づけとなる特例法については成立させる責任があると思う、と発言した。そのとき、うまくいえなかったが、ボクがいいたかったことは、こういうことである。
民主主義とは、最後は多数決で意思決定をする制度である。多数決で負けた側が、決定がなされた後もずっと反対し続けたのでは、民主主義は成立しえない。どのような議論があったにせよ、いったん左側通行と決めたからには、いくら右側通行をしたいからといっても左側通行に従わなければならない。自分は100キロ出したいけれども、60キロ走行というルールをみんなで決めた以上は、それでも100キロ出して走ったらやっぱりその人はルール違反をしているとみなされるのである。さて、いま、不信任案が否決され、菅内閣は信任された。憲法によって野党に提出が許されている不信任案というのは、議院内閣制のもとでもっとも重要な議案であり、それには大きな責任がともなう。公明党には、不信任案を「提出した」責任もたしかにあるが、それとともに(多数決に破れた以上)国会での議決を「受け入れる」という責任もある。それは、民主主義に対する責任である。自分たちが起こしたアクション(不信任案提出という動議)の結果として菅内閣が「信任」されてしまったのであるから、その内閣がすでに成立させている予算執行を認めない、ということは論理的におかしい。
しかし、ここまでいったからには、返す刀で、民主党に対して厳しいことを言わなければならない。現職の首相が「辞める」という意思表示をすることで、野党の不信任案を否決しようなどという姑息な手段があってよいはずがない。辞めていく首相を「信任」する、とは、どういうことであるのか。国会の議決、憲法に規定されている信任案・不信任案の重みを、何だと思っているのか。民主党は、責任を果たしていないどころではなく、議院内閣制を、そして民主主義を、冒涜したといっても過言でないのである。

2011年06月04日

兎と亀の政治学的会話:SNLで笑える政治家と笑えない政治家

兎:今夜から君の大好きなサタデーナイトライブが日本でも始まるらしいね。
亀:そう聞いた。日本の芸人たちが、というか、日本のメディアが、どこまで政治や政治家を皮肉ることができるか、お手並み拝見というところだな。あまたある、つまらん「お笑い番組」のひとつにならないことを、いちおう、期待はしているけど、ま、ちょっと無理じゃないかね。
兎:SNLといえば、最近は本場のSNLでからかったらたまらなく面白だろうなという政治家の行動に、日本は事欠かないね。
亀:ちょっと前に、セス=マイヤーがまっとうな報道番組(NBC Meet the Press)でインタヴューを受けていたのをみたが——ということは、つまり、SNLの取り上げ方自体がいまアメリカではニュースになっているということだが——、その時彼は、とにかく政治家のつっこみどころ満載の言動こそが、自分たちのメシのタネだから、政治家にはずっとこのままでいてくれ、洗練されないでくれ、と「お願い」していたよ(笑)。
兎:その点からすると、いま一番ネタになるのは、だれだい?
亀:そりゃ、あの前の総務大臣の、ホリぐち、じゃなかった、ホラぐち、いやいや、ハラぐち、だろう。「不信任案を野党が出したといえども賛成します」が、一夜明けると、「野党の不信任案に乗るなんて邪道」になっちゃうんだから(笑)。
兎:たしかに、あの「いけしゃーしゃーぶり」を、怒るんじゃなくて、徹底的にからかうような、テレビ文化の熟成を、日本でもみてみたいもんだ。
亀:しかしだね、からかえないような、したたかな政治家もいるな。
兎:小沢さんかい?
亀:だってさ、このごたごたで政治的な得点を稼いでいるのは、あの人ぐらいじゃないか。
兎:自民党も公明党も、頼りにしていた不信任同調組の親玉である彼に、肩すかしを喰らっちゃった。鳩山は、相変わらず「わき甘」なところを見事に披露しちゃった。で、肝心の菅は、不信任は乗り越えたけど、不安定な党内を抱えたまま。
亀:一方、小沢だけは「自分のおかげで退陣発言を勝ち取った」という功績をあげたことになっている。しかも、それでも菅が実際に退陣しないのは、鳩山のわきの甘さがいけなかったんだ、ということで、ちゃんと非難も回避している。
兎:うまく「除籍」もま逃れているしね。
亀:小沢にしてみれば、政権党である民主党の中に自分を置き、しかもその民主党が混乱することが、一番望ましい状態なんだよ。で、今回は、野党からの不信任を退け、民主党がまがりなりにも政権の座を維持した、しかしそれでも党内は混乱したままである、という、小沢の描いた筋書き通りにことが進んでいる、という感じがする。
兎:なんで、自分の党が混乱している方がいいんだい?
亀:小沢という人は、まえに自民党を割って出たときもまったく同じ状況だったが、政治家になりたての、選挙に弱い人たちを多くまわりに従えて、数の力を誇示するんだよ。で、こうした若い人たちは、このままじゃ、民主党は次の選挙で負けると思っている。つまり、自分たちが「失職」しちゃうって、思っているんだな。で、小沢は、その弱みを最大限、自分の影響力の拡大に利用しているわけさ。菅じゃ勝てないでしょ、党を改革しなきゃだめでしょ、ってね。
兎:でも、小沢自身は、選挙で負けることはありえないよね。
亀:いや、だから、むしろ彼にしてみれば、民主党が負ける方が、もう一度自分にチャンスが回ってくる、ぐらいに考えているのさ。つまり、小沢についていっている若い政治家たちと、小沢自身の政治的利害というのは、本当は真っ向から対立しているんだよ。