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兎と亀の政治学的会話:SNLで笑える政治家と笑えない政治家

兎:今夜から君の大好きなサタデーナイトライブが日本でも始まるらしいね。
亀:そう聞いた。日本の芸人たちが、というか、日本のメディアが、どこまで政治や政治家を皮肉ることができるか、お手並み拝見というところだな。あまたある、つまらん「お笑い番組」のひとつにならないことを、いちおう、期待はしているけど、ま、ちょっと無理じゃないかね。
兎:SNLといえば、最近は本場のSNLでからかったらたまらなく面白だろうなという政治家の行動に、日本は事欠かないね。
亀:ちょっと前に、セス=マイヤーがまっとうな報道番組(NBC Meet the Press)でインタヴューを受けていたのをみたが——ということは、つまり、SNLの取り上げ方自体がいまアメリカではニュースになっているということだが——、その時彼は、とにかく政治家のつっこみどころ満載の言動こそが、自分たちのメシのタネだから、政治家にはずっとこのままでいてくれ、洗練されないでくれ、と「お願い」していたよ(笑)。
兎:その点からすると、いま一番ネタになるのは、だれだい?
亀:そりゃ、あの前の総務大臣の、ホリぐち、じゃなかった、ホラぐち、いやいや、ハラぐち、だろう。「不信任案を野党が出したといえども賛成します」が、一夜明けると、「野党の不信任案に乗るなんて邪道」になっちゃうんだから(笑)。
兎:たしかに、あの「いけしゃーしゃーぶり」を、怒るんじゃなくて、徹底的にからかうような、テレビ文化の熟成を、日本でもみてみたいもんだ。
亀:しかしだね、からかえないような、したたかな政治家もいるな。
兎:小沢さんかい?
亀:だってさ、このごたごたで政治的な得点を稼いでいるのは、あの人ぐらいじゃないか。
兎:自民党も公明党も、頼りにしていた不信任同調組の親玉である彼に、肩すかしを喰らっちゃった。鳩山は、相変わらず「わき甘」なところを見事に披露しちゃった。で、肝心の菅は、不信任は乗り越えたけど、不安定な党内を抱えたまま。
亀:一方、小沢だけは「自分のおかげで退陣発言を勝ち取った」という功績をあげたことになっている。しかも、それでも菅が実際に退陣しないのは、鳩山のわきの甘さがいけなかったんだ、ということで、ちゃんと非難も回避している。
兎:うまく「除籍」もま逃れているしね。
亀:小沢にしてみれば、政権党である民主党の中に自分を置き、しかもその民主党が混乱することが、一番望ましい状態なんだよ。で、今回は、野党からの不信任を退け、民主党がまがりなりにも政権の座を維持した、しかしそれでも党内は混乱したままである、という、小沢の描いた筋書き通りにことが進んでいる、という感じがする。
兎:なんで、自分の党が混乱している方がいいんだい?
亀:小沢という人は、まえに自民党を割って出たときもまったく同じ状況だったが、政治家になりたての、選挙に弱い人たちを多くまわりに従えて、数の力を誇示するんだよ。で、こうした若い人たちは、このままじゃ、民主党は次の選挙で負けると思っている。つまり、自分たちが「失職」しちゃうって、思っているんだな。で、小沢は、その弱みを最大限、自分の影響力の拡大に利用しているわけさ。菅じゃ勝てないでしょ、党を改革しなきゃだめでしょ、ってね。
兎:でも、小沢自身は、選挙で負けることはありえないよね。
亀:いや、だから、むしろ彼にしてみれば、民主党が負ける方が、もう一度自分にチャンスが回ってくる、ぐらいに考えているのさ。つまり、小沢についていっている若い政治家たちと、小沢自身の政治的利害というのは、本当は真っ向から対立しているんだよ。