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想定外のできごとについて

知っている人は知っているが、成田空港のJALのラウンジのビーフカレーはおいしい。
ただ、考えてみれば、航空会社が空港のラウンジのメニューを充実させる、というのは不可解である。
ビジネスクラスに乗る人たちは、飛行機に乗ってからアルコールを飲み放題で飲めるわけだし、一段格上の食事も食べられるわけである。そういう人たちを相手に、ラウンジでもこれまた飲み放題のワインやビール、おいしい料理を振舞うというのは、コンセプトとしてはredundantであるし、費用対効果上はinefficientである。とくに、経営難におちいっている(と聞いている)JALさんが、ラウンジのメニューを充実させることはおかしいのではないかと、ちょっと心配になってくる。
ま、ビジネスクラスにいつも乗るお客さんには、貪欲というか、うるさ型というか、いつでもどこでも、うまい料理と豊富なアルコールがなければ、すぐさま文句を言い出す人種がそろっている、という可能性はある。もしかすると、JALのビジネスを利用するお客さんは、とくにそういう傾向が強い人たちなのかもしれない。あるいは、機内食を食べる前にどうしてもビーフカレーを腹に入れておかなければ気がすまないと思っている人、ラウンジで日本独特のビーフカレーを食べておかないと海外出張の行程がはじまらないと思っている人ばかりなのかもしれない。
・・・というわけで、先日、久しぶりに、成田からJALのビジネスクラスにのることになった。
ボクは、経営難に陥っている(と聞いている)JALさんが、いまでも、ラウンジでおいしいビーフカレーを出してくれるのだろうかと気がかりで、チェックインをしてくれた女性の方に尋ねてみた。そしたら、「はい、いまでもご用意しております」という答えであった。おお、よかった、今日はひさびさにあのカレーが食べられる、うん、しかし、食べすぎはいかんぞ、あとで機内食も出てくるしな、などと独り言を心の中でつぶやきながら、しばし、気分はルンルンであった。
ところが・・・・・ところが、ですね、ここにひとつ、落とし穴がありました。
ボクのゲートは、第2ターミナルビルの、いわゆるサテライト側でした。
そして、なんと、サテライト側のラウンジには、カレーはない、のです。
そう、カレーがあるのは、本館のみ、なのです。がーん、ショック。
いまさら、シャトルで逆走して、本館側に戻るわけには、いかない。なーんだよう。そんなこと、いってなかったぞー。

ところで、われわれは、こういう状況を「想定外」という言葉で描写するのであります。
想定外とは、事前には、想定するすべもヒントもまったくありえない状況が起こってしまうことを、(後になって)そういうのであります。
原子力発電所が地震や津波で大きな事故を引き起こすかもしれない可能性については、前々から多くの人が懸念をしていたことであるので、それは「想定外」だったのではなく、「想定を怠っていた」だけのことなのであります。