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2010年11月28日

じゃんけんゲームの国際関係論

先日、あるラジオ番組(CBC “Ideas” Nov. 22)を聴いていて、次のような話がされていた。ゲーム理論入門のような、きわめて簡単な話なのであるが、このような簡単な話が、案外と、いま日本が直面する国際関係の問題をわかりやすく解説してくれるのではないか、と思った。
いま、かりにあなたが、じゃんけんを何度も繰り返すゲームに参加しているとしよう。そして、このゲームには、(国家と国家との対立関係を想起させるべく)結構大きなお金がかかっているとする。勝ち続ければいいもうけとなるが、負けがこむとかなりな金額を支払わなければならないという状況である。要するに、あなたは真剣にこのゲームに取組まなければならない、と想定するのである。
さて、この場合、あなたにとって、最適な戦略とはなにか。その答えは単純である。それは、グー、チョキ、パーを、3分の1の確率でランダムに出す、という戦略である。なぜか。たとえば、あなたがグーを2分の1、チョキとパーをそれぞれ4分の1ずつ出す戦略をとったとする。しかし、そうすると、あなたにとっては、都合の悪い事態が生じかねない。なぜなら、この場合、もし相手が毎回パーを出す戦略を取るとすると、あなたは4分の1は勝ち、4分の1は引き分けるが、半分は負けることになり、全体としてはあなたが負け越すことが明らかだからである。実際、このゲームにおいては、3分の1ずつグー、チョキ、パーを混ぜ合わせて出す戦略から逸脱すると、あなたはそれよりも優れた相手の戦略によって損をする可能性を受け入れなければならないことになるのである。
いま、グー、チョキ、パーを、攻撃的な行動、協調的な行動、中立的な行動に、置き換えて考えてみる。すると、どういうことが見えてくるか。上のじゃんけんゲームの論理に従えば、国家と国家とが対峙しているとき、最適な戦略は、この三つの行動パターンを混ぜ合わせて使う、ということになる。つまり、あるときは明からさまに軍事的脅威をあおってみせ、あるときは核開発を中断するなどといったジェスチャーをとり、そしてあるときは多国間協議に応じてみる、というように硬・軟・中立を使い分けることは、きわめて合理的な戦略展開だと解釈できるのである
実は、なぜこんなことをブログに書こうとおもったかというと、今日、ある政治討論番組を見ていたら、国際問題の専門家を自称している方が、「北朝鮮の行動は、ときどき説明のつかないことがある」と発言していたからである。たしかに、北朝鮮の行動は、ひとつひとつをみると理解に苦しむような、整合性のとれてない場合もある。しかし、だからといって、北朝鮮の行動が非合理的である、などと考えることはとんでもない誤りである。この単純なじゃんけんゲームの話は、一見整合的でないように行動を組み合わせることが、いかに合理的であるかを、見事に物語っているからである。
ところで、上のじゃんけんゲームの最適戦略には、ひとつの重大な難点がある。それは、この戦略では、たしかに「負け越さない」ということは保障されるが、それは「勝ち越す」ために有効であるとはいえない、ということである。
しかし、ボクには、このこと自体もきわめて示唆的に、ひとつの知見を提供してくれるように思える。つまり、いまわれらが隣国は、(たとえば南北を統一しようなどという)だいそれた目的に基づいて動いているのではなく、いかに自分たちの国家体制を存続させるかと、「負けない」ことに汲々としている、としか思えないのである。

2010年11月25日

新規開拓の食事処とカフェ

いま住んでいるところに越してきてかなりの年月が過ぎたが、新しいランチの店とかカフェとかの開拓がそれほど進んでいない。歳をとるごとに保守的になってきて、知らず知らず気に入った所に立ち戻る、という傾向が強いからである。とはいいながらも、去年まで2年間サバティカルをいただいたせいで、少しずつではあるが、お気に入りの店が我が家のまわりに増えてきた。今日は、そのいくつかをご紹介しよう。
まずは、山下公園の前、シルクセンターの地下一階にある、カツカレーの店「どん八」。ここは、とにかくボリュームがすごい。ヒレカツカレーにも(ロース)カツカレーにも、S、M、Lとサイズがある。ボクはSで十分である。ときどきMを注文している人たちもいるが、最後の方になると、みな汗をふきふき、苦しそうに食べている。Lをたのむ無謀なお客さんには、いまだお目にかかったことがない。カツは揚げたて、カレーは昔ながらの味で、ボクは大好きである。ランチしかやってなくて、いついっても混んでいる。一度、1時半頃に行ったことがあるが、「今日はもうゴハンがなくなっちゃって」と断られてしまいました。
馬車道方面に足が向くときに、ときどき訪れる店としては、洋食屋「サクライ」がある。小さな店で、旦那さんと奥さんと、もう一人(奥さんの姉妹ではないかと思える)が、いっしょうけんめい働いていて、心が暖まる。この店の名物は「メキシカンチリハンバーグ」。辛いチリソースのハンバーグなわけだが、これがどういうわけか癖になり、1ヶ月に1度はどうしても食べたくなってしまう。
もうひとつ、最近特にお気に入りは、外人墓地の前にある「ロシュ」というレストラン。落ち着いた雰囲気の洋食屋さんで、ボクはここの海老フライが好きである。海老フライそのものを注文すると、ジャンボサイズのが2本出てくる。どうしても本格的な海老フライが食べたいのなら、それをおすすめするが、お得感のあるのは、ちょっと小ぶりの海老フライ2本とオムライスがセットになっているもの。どちらも本当に美味しいです。
ロシュでランチを食べて、そのまま山手をぶらぶら散歩し、エリスマン邸の喫茶室で勉強するのが、ボクの最近のひとつのコースになっている。ここは、いまだと、元町公園の紅葉を見下ろせて、とてもきれいである。ボクはいつも決まった席にすわって、長居させてもらっている。自家製ではないけれども、ケーキも美味しいです。
さて、最後にご紹介するのは、ジャズバー「491ハウス」。中華街の入り口にある。とある夏の夜、家にワインがなくて、どうしても冷えたシャルドネが飲みたいと思い、ふらりと入ったのがきっかけで、行くようになった。ジャズは、自分の好みと合うときもあれば合わないときもあるけれども、雰囲気としては最高です。バーテンさんは、まだ若いのに、一度クレジットカードで支払いしたらボクの名字をその次からちゃんと覚えていた。そういうプロフェッショナリズムも、大変よろしい。で、ここの冷やしトマト(アンチョビソースがかかっている)とキーマカレーは、本当に絶品です。みなさん、お近くにお出での際は、是非、お試しください。

2010年11月19日

ランチにイタリアンに行くか?

この前、あるひとつの事実に気づいてしまった。
ボクはランチでイタリアンに行くことがあまりない。
それで、はてなぜだろう、と、自分自身のこの行動パターン(あるいは、行動パターンの欠如というべきか)についての自問自答が始まった。
うーん・・・。
まず、ですね、だいたい、ですね、お洒落なイタリアンに行くときには、素敵な女性と行きたい。あるいは素敵な女性と連れ立って、他の素敵なカップルと一緒に、お洒落な雰囲気を楽しみたい。
しかし、大学にいるときには、ボクは圧倒的に一人で昼を食べることが多い。たまに、同僚の久米先生とか、院生たちと一緒にランチをすることもあるが、それは仕事の延長みたいなもんで、お洒落を楽しむためにランチをしているわけではない。
それから、ランチでイタリアンレストランに入ると、たいてい「パスタ」か「ピザ」しか、ランチメニューにない。「今日のパスタか、今日のピザからお選びください。ミニサラダとコーヒーが付いてます。」どこへいっても、決まりきったように、そう書いてある。
だが、イタリアンというのは、パスタとかピザを食べたあとに、ちゃんと肉や魚を食べるところだ、とボクは思い込んでいる。パスタとかピザを食べるまえに、前菜にハムとかカラマリとかを食べるところだ、そして最後にティラミスとエスプレッソを頼むところだ、とボクは信じきっている。
パスタごときなら、家でも簡単に作れるではないか。
ピザごときなら、宅配を手軽に頼めるではないか。
ところが、ランチタイムのイタリアンで、家ではつくれないとびきり美味しいパスタとか、宅配を圧倒的にしのぐ美味しいピザが出てくる、ということは、まずない。実は、パスタとかピザとかは、美味しさを差別化するのがかなり難しい料理である。だから、ランチにイタリアンに行っても、「うーん、これはうまい」と感激することが少ない。というわけで、スズキとか子牛肉とか、デザートの出てこないイタリアンランチには、魅力を感じないのである。
さて、先日、ある都合で、ある方とイタリアンでビジネスランチをすることになった。「今日のパスタ」を見ると、美味しそうな選択肢がない。それで、いいやめんどくさい、とおもい、「今日のピザ」の中から、ルッコラとハムを注文した。ところが、これが失敗であった。こういう時には、ピザではなく、パスタを頼むべきだ、と後から後悔したのである。なぜだか、わかりますか?そう、ピザは、パスタに比べて、取り分けが簡単なのですね。そのときホスト側であったボクは、どうですか、とすすめざるを得ない。いや、パスタだって取り分けすることもできなくない、といわれればそうであるが、なかなかビジネスランチでは、それはむずかしいのではないかな。