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政治とコメディ

最近、日本では、世相を皮肉る芸人が少ない(ような気がする)。
ボクが育ち盛りのときは、モノマネといえば、政治家のモノマネが定番だった。田中とか福田とか大平とか、格好のネタだった。それがいつ頃からだろうか(天才コロッケの登場あたりからか)、すっかりメジャーの笑いから外れている。政治家の真似をしても面白くないと思っているのか。あるいは、真似してもウケを狙える大物の政治家がいなくなったのか。
ボクのゼミの一期生にK君という八方破りの男がいるのだが、K君はよく政治家のモノマネをして、みんなを笑わせてくれた。小泉元首相とか、石破茂政調会長とか。そう、現代においても、モノマネしたら面白い政治家はたくさんいると思う。民主党の(しゃべり出したらとまらない)Y副代表、(笑顔が作り笑顔にしかならない)R大臣、みんなの党の(髪の毛を立ててない素の顔を見てみたい)W代表・・・。どれも特徴をつかみやすいし、結構笑えると思うけど。
ボクは、海外へいくたびに飛行機の中やホテルで、HBOのスタンドアップコメディーを見ることにしているが、向こうでは「ここまでいっちゃって大丈夫か」というような、政治風刺がいまでも盛んである。たいがい、こうしたコメディアンたちは、共和党や保守派に対して特に批判的であり、ブッシュやサラ・ペーリンなどが格好のターゲットにされている。どれも一時間以上にわたって、もちろん何もメモなどみることなく、次から次へとネタを浴びせ続け、客を掴んではなさない。はっきりいって、こうした計算されたプロの笑いを見てしまうと、今の日本のお笑い芸人の芸は薄っぺらで、比べようもない。
最近の中では、ひとつはBill Maherの新しいショーが強烈だった。「いまだに進化論を受け入れない(←つまり神様がこの世を作ったと信じている)人たちが多数派を占めるアメリカは、アホstupidで、反知的anti-intellectualである」と決め付け、テキサスあたりの「いなかもの」をとことんコケにする。そして、アフガニスタン戦争への反対を唱え、オバマ政権にも釘をさす。それを、すべて笑いにつつんでやるところが、うーん、すごいな、と感心する。
しかし、今回それよりも、もっとすごいのをみた。Robert Klineの新しいネタ、Unfair and Unbalanced。この人のショーは、いつも歌が入る。自分でハーモニカも吹いて、エンターテイメントとして本当に素晴らしい(ただし、あまりに露骨な性的表現が多いので、それがいやな人には見せられない)。今回は、ゲイ批判を続けていたのに自分もゲイだったことが発覚した元上院議員を皮肉った場面が、最高に面白かった。この上院議員は、なんと、空港の公衆トイレでセックス行為をしていたところを見つかっちゃったのである。その滑稽さを、さんざんバカにして、からかっていた。みなさん、本当に可笑しいので、ぜひチャンスがあったら、ご覧になってください。
いうまでもないが、政治家をネタとして笑い飛ばす、というのは、民主主義においてきわめて健全なことである。笑い飛ばしているのが有権者であり、笑い飛ばされているのが(その奉仕者であるべき)政治家という構図は、民主主義の権力関係をよく凝縮して表現しているからである。もしも、万が一、政治家をネタとして笑い飛ばしてはならないなどという雰囲気ないし圧力を、日本の芸人たちや(彼らを採用する)メディアの方が感じているとすれば、それはとんでもない、反民主主義的な事態である。