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兎と亀の政治学的会話

兎:小沢の圧勝だな
亀:まったく。小沢の圧勝だな。
兎:小沢は、代表選にでて負けたことがない。3戦3勝。出ると決意したこと自体、勝てると判断した、ということだ。だから、この代表選でも、負けるはずがない。
亀:いや、その論法は、ちょっと性急だ。厳密にいうと、代表選の勝負はまだついていない。
兎:はあ? キミもいま、小沢の圧勝、っていったじゃないか。
亀:いいかね、圧勝の意味が違うんだよ。代表選では、ボクは、小沢が勝つと予測する。それはなぜかというと、全勝という戦歴が、彼の決意と政治的判断能力に、クレディビレティ(信憑性)を与えるからだ。3勝4敗の管とは大違いだよ。どっちにつこうか、まだ迷っている人にとってみれば、その差は大きい。
兎:たしかに、管の方の戦績は「(代表選に)参加することに意義がある」ということを宣言しちゃっているようなもんだからな。
亀:だから、管が「どっちが勝ってもノーサイド。代表選が終わったら、一致結束してやりましょう」というと、この人、本当にそう思っているんだろうな、とまわりに思わせてしまう。
兎:小沢だって、同じようなことを発言している。
亀:しかし、それを額面通りに受け取る人はいないさ。
兎:勝ったら、管を応援する前原や野田に冷飯を食らわせて、挙党態勢なんかつくらないだろう、ということか?
亀:そうじゃない。勝ったときどうなるか、が重要じゃなくて、万が一、小沢が負けたときのことが鍵なんだよ。小沢の戦績は、まわりに「出たからは、勝つ」といってるようなものだ。それは、いいかえれば「オレは勝つことしか眼中にない」というメッセージを送っているわけだな。
兎:うんうん。
亀:そのメッセージのさらに一歩先を読めば、「もし万が一オレが負けたら、そのとき民主党はどうなるか、オレは知ったもんか」っていってるのと、同じなのさ。
兎:分裂ってことか。
亀:もちろん小沢は「負けたら分裂させてやる」なんて、ひとことも言ってない。しかし、彼の過去の戦績によって、負けたら党を割って出るぞというメッセージが暗黙のうちに、まわりに送られているのさ。
兎:ということは、管が(万が一)代表選に勝っても、分裂するってことか。
亀:そう。そして、そこまで先読みする人は、小沢支持にまわらざるを得なくなる。党が分裂して政権から離れるのは嫌だろうからね。だから、結局のところ、小沢の圧勝ということにならざるをえないのさ。
兎:管は、どうしても勝てないかね。
亀:むずかしいね。
兎:政策論争をしかけて、勝ったとしても?
亀:政治家を選ぶとき、政策なんてものは大した要素にならない。その人がひとつひとつの行動に命をかけているか、政治生命をかけているか。そういう気迫が伝わってくるかどうかの方が、よっぽど重いと思うね。
兎:たしかに、小沢からは「何がなんでも勝ちにいく」という覚悟が伝わってくるが、管を応援している連中からは「小沢と絶縁してでも勝ちにいく」という覚悟は伝わってこないね。
亀:それは、つまりは、政権を手放す、という覚悟だからね。
兎:じゃあ、管にできることは何もないのか?
亀:あるさ。それは、小沢との決別を前提にした、代表戦が終わった後どうするかという戦略の青写真を描くことさ。
兎:政界再編、ということ?
亀:実際にそうなるかどうか、ではなく、いまそういう青写真をもってないと、管の現在の主張にクレディビリティが備わらないんだよ。
兎:ほかには?
亀:あとは、ネガティヴキャンペーンだろうな。曖昧な仲直りなどあり得ない、ということを明確にする、徹底したネガティヴキャンペーンを展開すること。
兎:やるかね?
亀:やらないだろうね。もしそんな気があるんだったら、もっと前からやっているはずだし、昨日の小沢との会見自体すべきじゃなかったはずだからね。