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「エキストラ」

先日、新宿紀伊國屋のサザンシアターで、東京ヴォードヴィルショーの公演「エキストラ」を見た。
ヴォードヴィルの芝居を見るのは、たしか3回目である。もう2年ぐらい前、ヴォードヴィルに所属するある女優さんと仲のよい友人に誘われてはじめていったらとても面白かったので、ボクは、それ以来ずっと、機会があったらまた行きたいとお願いしている。今回は三谷幸喜作・演出で、しかも伊東四朗さんが客演として出るので、どうしても見たいと思っていた。それが実現したわけである。
そしたら、期待通り、よかった。
なんといっても、伊東四朗さんが素晴らしかった。観客の視線を一手に引きつけておいた上でストンと落としたり、まったく思いもかけない間で登場してきたり、会話の受け手(ボケ)を絶妙に演じたり、それでいてちゃんと哀愁を漂わせたり、いやホント、感激しました。
それから、同じく客演の(欽ちゃん劇団出身の)はしのえみさんも、明るくてとってもよかった(ちょっとファンになってしまいそう)。もちろん、大黒柱である佐藤B作・あめくみちこご夫妻も、相変わらず元気いっぱいで、十分楽しませてくれました。
ひとつのセットで、2時間、それも休憩なしに突っ走るというのはかな~り凄いことである。三谷さんの芝居は登場人物が多いことで有名らしいが、今回もちゃんとそれぞれの人物にコネタが仕掛けてあった。こういうシナリオを書くの、楽しいだろうなあ、と思いながら、ボクはうらやましくみていた。この展開のあとにあの話しをもってきて…とか、このシーンのためにはあそこでネタをまいとかなきゃ…とか、結局シナリオづくりというのは、よい学術論文を書くのとまったく同じ作業なのである。
芝居が終わった後で、(友人にくっついて)楽屋を訪ねるのがまた楽しい。出演者のハイテンションがそのまま持続されていて、そこらじゅうにエネルギーがみなぎっている。「あの場面マジで笑いがとまらなくて困ったわ」とか「あそこでトチッちゃってさあ」とか、いろいろ裏話もしてくれて、それをまたほかの劇団員が横からからかったりして、なんか家族のような感じがする。もちろん、中に入るといろいろ神経を使う嫌なことも多いのだろうけど、すくなくとも芝居がハネた直後は、みんな生き生きとしている。
公演は、翌日も、その翌日も、ずっと続く。役者さんは、体調を崩すわけにはいかない。だから、彼らは、楽をむかえるまでは、飲みに行ったりすることもできない。しかも、ひとつの公演がおわると、次の公演が控えている。すぐその稽古に入らなければならないので、ゆっくり休養したりすることもできない。
こう考えると、舞台俳優というのは、かなり強固な自己規律とコミットメントを必要とする職業である。
この辺は、われわれ学者と似ている、とはいえないかもしれない。