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アールグレイ&キャプテンピカード

TREKKIE、すなわちスタートレック・ファンなら誰でも知っているが、キャプテン(ジョン・ルーク)ピカードのお気に入りの紅茶は、アールグレイである。彼は、いつもUSSエンタープライズの船長室で、食物再現機に向かって「熱いアールグレイ」と注文して、飲んでいた。彼と微妙な関係の美しいドクター、(ビヴァリー)クロッシャーも、たしかアールグレイが好きだったのではないか、と記憶している。
このアールグレイであるが、ボクらが子供の頃、そんな紅茶は、日本になかった。だいたいボクらが小学校に通っていた時代には、日東紅茶かリプトンのティーバッグぐらいしか、紅茶なるものが日本には(←正確にいうと、わが家のまわりには)存在しなかった。ところが、今では、ごくふつうのスーパーでも、数え切れない種類の紅茶を陳列してある。その中からどれを選んでいいのかは、いつも迷う。最近は、文字通り経路依存でもって、アールグレイにしてしまう。
よく知らないけれども、アールグレイは、紅茶の中では、異端の部類に入るのではないか。他のティーとちがって、香りと味が人工的な感じがする。実際、最初飲んだとき、なんだかリップクリームだか香水だかの混ざった紅茶を飲んでいるようで、好きになれなかった。ところが、どういうわけか、何度か飲んでいるうちに、これが忘れられない風味になってくるのである。まさに、英語でいうところのacquired taste。だから、ほかに、たくさんの種類の自然系・正統派の美味しいティーがあるのに、わざわざアールグレイを買ってしまう。ストロベリーとかバニラとか、ほかにいろいろ自然系・正統派のアイスクリームがある中で、わざわざ抹茶アイスクリームなどというものを注文してしまうのと似ている。
ところで、キャプテン・ピカードがアールグレイ以外のティーを入れて飲むシーンって、あるんでしょうか。ボクは、そこまで熱烈なトレッキーじゃないので、そんなシーンがあるのかどうか、知らない。多分ないのではないか、と思う。こういうのは、登場人物にリアリティーを持たせるための、一種の仕掛けだからね。007シリーズで、ジェームス・ボンドがいつも「ウオッカマティーニ。ステアせず、シェイクしたやつをね」と注文するのと、まったく一緒である。ただ、ジェームス・ボンドに関しては、どこかで聞いたことがあるが、シリーズの中で2回だか3回だか、ウオッカマティーニ以外のドリンクをオーダーする場面があるんだそうである。しかし、考えてみれば、これもまた、リアリティーをもたせるための、仕掛けかもしれない。ごくたまに、そのようないつもと違う行動をさせることで、観客に「あれ、今日はなんか、あったのかな」などと、想像を掻き立たせることになるからである。
キャプテン・ピカードを演じていた俳優は、パトリック・スチュアートという。イギリス出身で、もとは舞台俳優であった。ボクは、この人に会ったことがある。もう2年ぐらい前になるが、銀座の歌舞伎座の前で人と待ち合わせていたら、彼が突然チケット売り場から出てきた。近づいていって、「写真をとっていいか」と聞いたら、断られてしまった。しかし、その代わり、がっちり握手をしてくれた。イメージしていたより、背が低かった。とっても綺麗な、若いブロンドの女性を連れていた。