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サム・クック

「♪歴史はあんまり知らないよ、生物学のこともね・・・科学の本も読んだことないし、学校で習ったフランス語もよくわかんない。でも、ボクが間違いなく知っているのは、ボクが君を愛しているということ。そして、もし君もボクを愛してくれていたなら、なんて世界が素晴らしいか、ってこと♪・・・」(「What a Wonderful World」より)
いいねえ、サム・クック。今回カナダへ出張していたとき、スタバに彼のベストアルバムがおいてあったので、つい買ってしまった。帰国してから、もうこればかり聴いている。朝聴いてもいいし、夜聴いてもいい。お風呂に入るときも、ドアを開けっ放しにして、聴こえるようにしている。
多分ボクがはじめてサム・クックの歌を聴いたのは、アメリカに高校留学していた時だと思う。彼が活躍していたのは、せいぜい1960年代初頭だから、もちろんリアルタイムではありませんよ。向こうでは、よくラジオを聞いていたんだけど、そのとき流れていたのですね。アメリカのラジオ局は、古くてもいい曲だったら、ちゃんと敬意を払って、かけてくれる。こうして、文字通り、時代を超えた名曲が作られていく、ってわけですね。で、彼の「You Send Me」とか、「Cupid」とか、「Everybody Loves Cha Cha Cha」とかは、一日に一回ずつぐらいは聞いていたんじゃないかなあ。
最初は、曲をいいなあと思っても、何という人が唄っているのか、わからない。別にDJはすべての曲の紹介をするわけでもないし、こちらの英語の聴き取りも未熟だから早口で紹介されても、「えっ?だれだって?」って感じで過ぎ去ってしまう。たまたま、自分の気に入った曲がかかったときに、友人と車に乗り合わせていたりすると、教えてもらえた。きっと、彼の名前も、そうして覚えたのではないかと思う。
こうした名曲の数々は、映画の中で使われたりしていて、思いがけないときに出会うことになる。冒頭に引用したWonderful Worldは、ハリソン・フォード主演のWitnessという映画の美しい1シーンで、使われている。フォード演じる刑事は、ある事件の目撃者であるアーミッシュの少年をかばいながら、アーミッシュ村に入りこんでしまう。で、その少年の未亡人の母親(ケリー・マッギルズ)と、納屋の中で古いラジオから流れてくるこの曲に合わせて、はじめてダンスするんですね。この曲は、映画の観客だれもがノスタルジーにひたってしまう曲なので、ハリソン・フォードが我慢しきれず彼女をダンスに誘ってしまう気持ちが本当によく伝わってくる。
今度初めて知ったのだけど、サムクックの歌は、ほとんどが彼のオリジナルなんだってね。だからこそ彼の歌には心がこもっているんだということがよくわかった。わかりやすいし、会話調で語りかけるようになっていて、われわれの感覚にピタリとあう。そういう歌をつくる才能は、なかなか一朝一夕にできるものではない。
と思って解説書をよんでたら、「サム・クックは常に書いていた。ナプキンの上。車の中。ホテルの部屋。彼のノートは、歌詞だけでなく、スケッチで溢れていた」、とある。ありゃま、そうかあ、やっぱりなあ。最近日記の更新が遅れ気味のボクには、ちょっと耳が痛いなあ・・・