村上春樹
ボクの日記に村上春樹の名前が出てきてびっくりというコメントが何通かきたので、「へっ、なんで?」という感じだった。というのは、ボクは、大学時代、村上春樹を読みまくっていたからだ。
『羊をめぐる冒険』を読んだときのショックは忘れられない。この小説は、「新聞で偶然彼女の死を知った友人が電話で僕にそれを教えてくれた」という一文で始まるのだが、それだけ読んで「これだぁー、オレの待っていた小説は!」と感動した。人生の偶然性、人間の存在の社会性、(いわゆる「私小説」に満ち溢れている)自意識(過剰)の無意味性を、小説の冒頭でこんなに端的に表現している人はいない、と思ってしまった。
感動して、なんどもなんども読みふけっていたら、そのうち『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』が出版される、ということになった。で、この小説も読んでみたら、とっても感動した。ま、小説からすると、こちらの方が完成度が高い、ということになるのでしょうねえ・・・ちなみに、ボクは、この本の初版本をちゃんとゲットしているのです(えへっ!)。でも、実は、ボクは、『羊をめぐる冒険』の方が、やっぱり好きなんだな。
この『羊をめぐる冒険』と『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』との関係は、イーグルスの『呪われた夜』と『ホテルカリフォルニア』との関係に良く似ている。『呪われた夜』が出たとき、「すげぇー、これは傑作だな。これ以上のアルバムはつくれないだろうなあ」とか思ったものだ。そしたら、あっさり、『ホテルカリフォルニア』をつくっちゃうんだからね。でも、やっぱり、ボク、『呪われた夜』に対する愛着があるんです。「ハリウッドワルツ」、「アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン」、「アイ・ウィッシュ・ユー・ピース」、ああ、なつかしいなあ。
さて、村上春樹。ボクは大学時代、村上春樹を読め読めと、会う人ごとに薦めまくっていた。そのひとりが、ボクの先輩で、敬愛するMさん。この方は、プリンストン大学に留学していたのですが、偶然、そのとき村上春樹さんが同大学に滞在していたのでした。そしたら、このMさん、ちゃっかり、村上さんと友達になってしまったのです(!)。おいおい、ボクをわすれないでよー、ボクだったでしょ、村上さん紹介したの~~。というわけで、このMさん、村上さんと食事したりする仲らしいのだけれど、ボクは、村上さんと友達ではありません。
あと、ボクが大学時代読んだ小説といえば、夏目漱石、ドストエフスキー、国木田独歩、安岡章太郎、中上健次。評論では、小林秀雄、吉本隆明、柄谷行人、蓮實重彦、加藤典洋。小説とか、評論とか、政治学にあんまり関係ないと思うかもしれないけど、ボク自身は、実は、こういった人たちを読んでいたおかげで、いまの自分の思考の仕方とか、自分の文章の組み立て方があると思っている。読書は、できるときにしておかないとね。
あ、日がすっかり暮れてきた。散歩にでようかな。小さな波の音でも聴くために。