卒業おめでとう 2015
河野ゼミ11期のみなさん、卒業おめでとう。
この2年間、君たちをすこしでも知ることができ、また君たちにボクをすこしでも知ってもらうことができ、よかった。できれば、もっとたくさんの、そしてもっと濃密な時間を過ごしたかったけれども、君たちと出会ったちょうどその頃から、ボクにはもうひとり大事な人がこの世界に誕生したので、なかなか思うようにいかなかった。しかし、それもまた、ボクの、そして君たちの人生の一コマだったんだ、と受け止めてください。
大学を卒業すると、君たちは社会の波に否応なく巻き込まれ、大学で学んだことなど、すぐ忘れてしまうかもしれない。ボク自身、まわりの同僚たちにくらべたらはるかに口うるさく、君たちに対して「そんなこと、社会に出たら通用するわけないだろ」というような叱咤を飛ばして、大学生から社会人への移行がうまくいくように、教育してきたつもりです。
しかしね、大学を卒業しても忘れてはならないメッセージというものも、やっぱりあるんだよ。それはね、なんでも効率を追求しなければならないとか、今日すぐ結果につながらないことには意味がないとか考えてしまう誘惑から、ちゃんと距離を保ちなさい、というメッセージ。単純に帰結主義的で近視眼的な思考(志向)は、多様な可能性の芽を摘み、人間を画一化するだけです。もしそのような誘惑ないし圧力に屈してしまうなら、君自身の人生そのものがつまらないものとなるばかりか、君が暮らしている社会も、活力を失ったものとなってしまう。
とりわけ昨今の政治的風潮は、「成長」を最優先し、「成長」につながらない研究や教育をないがしろにしようとしている。しかし、まったくあべこべであって、個々の好奇心から湧き出てくる自由な発想を「成長」と関係なさそうだと切り捨てる政策こそが、むしろ本当の成長を阻害し、ひいては国を滅ぼすことになるのです。このことを、どうか肝に銘じておいてください。そして、社会の歯車の一つとなっても、いや社会の歯車の一つとなった時にこそ、それを思い出してください。
卒業にあたって、今年はジェームズ・マディソンの以下の言葉を贈ることにします。
The advancement and diffusion of knowledge is the only guardian of true liberty.
卒業に、そしてこれからの幸せな人生に、乾杯!