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兎と亀の政治学的会話:維新の会の内紛について

兎:ほんとに喧嘩したと思うか?
亀:石原さんと橋下さんのことだよね? いやー、なかなか面白い、味わい深い質問だな、それは。
兎:どの新聞みても、週刊誌の見出しみても、「三行半」とか、「終わったね」という石原さんの発言を引用して、二人のあいだに亀裂が入ったことを確信する書き方になっている。
亀:そうだね。ということは、もし二人の間に本当は亀裂があったわけでなく、「亀裂があったことを演出する」というのが、誰かの作戦だったんだとすると、その作戦は見事に成功し、ほとんどの人がだまされている、ってことになるね。
兎:誰かの作戦って、そんなことして得する人がいるのかな。
亀:順番に論理だって考えていこうよ。都議選で、維新の会が勝てないことは、みんなわかっていたわけだよね。しかし、参院選までに橋下さんに代わる党の顔を立てることが無理ということも、おそらくみんな意見が一致していた。
兎:ということは、都議選で負けても、橋下さんに責任を取らせない状況をつくることが、維新の会にとって必要であった、ということになるね。
亀:もし、都議選が終わった時点で敗戦が確定し、いったい誰が責任をとるべきか、という議論になったら、当然、橋下さんにその批判の矛先が向く。やっぱり、あの慰安婦問題発言がいけなかったんだと。
兎:選挙結果によっては、橋下さんが批判に抗しきれなかったかもしれない。
亀:だから、選挙結果がまだ未確定の内に、橋下さんに責任をとらせるような一芝居が必要だった。
兎:石原さんが橋下さんを本当に「見捨てた」かのような発言をしたのは、真剣に演じないとその芝居が演出だということがばれちゃうから、ということだね。
亀:で、選挙直前になって二人が手打ちをする。というか、手打ちをしたフリをする。みている観客には、それによって「危機が回避された」と思い込ませる。
兎:そうか。「危機」を乗り越えた後だと、いくら選挙結果が芳しくなかったとはいえ、もう一回、橋下さんの責任を問う声を挙げることはむずかしくなるね。
亀:そう。選挙前に亀裂があったと思わせて、選挙後に訪れるかもしれなかった本当の亀裂を回避した、ってわけだ。
兎:君は、そんなことをいっているけど、証拠でもあるのかい?
亀:あるわけないさ。こういう分析は、想像力に頼らざるを得ないんだよ。
兎:石原さんや橋下さんに、インタヴューしたって、真実をいうわけないよね。
亀:最近、政治家の発言とか、政治家に対するインタヴューを、「オーラルヒストリー」とかたいそうに称して、政治学分析のデータとして使うのが流行らしいんだが、そういう研究って、ボクにはナンセンスとしか思えないな。
兎:しかし、本当に二人のあいだに、亀裂はなかった、と君は思うかね。
亀:いやいや。もし、このような想像のストーリーが正しいとすると、だね、実は、二人が喧嘩したかどうかなんてことは、どうでもいいことなんだよ。もし二人が一流の政治家だったら、二人とも、このストーリーのメリットを理解しているはずだからね。