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兎と亀の政治学的会話(解散・衆院選①):橋下さんの誤算

兎:第三極の動きが、慌ただしいね。一度合流を約束した減税日本をソデにしたり、みんなの党とは、くっつくんだか、離れるんだか・・・。
亀:不透明だよね、プロセスとして。
兎:政治家同志の駆け引きだけが先行し、有権者が置き去りにされている。橋下さんや石原さんの重要なメッセージは、既成政党の打破っていうことのはずなのに、こういう動きは、彼らも有権者に対するアカウンタビリティーをないがしろにしている、っていう印象を与える。
亀:いや、そもそも政党は、ある程度継続的に存在しているからこそ、民主主義にとって非常に重要なアカウンタビリティを担保できる。選挙前に急仕立てに作った政党に、それを期待することは、どだい無理な話だよ。
兎:でも、なぜ、こうなっちゃったのかな。
亀:橋下さんにはいくつかの誤算があって、状況の展開をすでに彼が制御できなくなってしまっている、って感じがするね。
兎:アウトオブコントロール状態?
亀:そう。第一の誤算は、石原さんの国政復帰。まさか石原さんが突然都知事を辞めて、第三極づくりに加わってくるとは思ってもいなかった。援軍は期待してただろうけど、まさか選挙の前に自分から乗り込んでくるとは、思ってなかったんじゃないかな。
兎:だいたい、なんで石原さんは、都知事を辞めたのかな。
亀:いろいろ憶測はできるよね。これは、知り合いの早稲田のちょいわるオヤジさんが複数のソースからきいた噂だそうだが、石原さんは自分の息子が総裁になれなかったことで、自民党に対し相当頭にきたらしい。そもそも彼が都知事4選に出馬するときに、それを請いた自民党との間で密約があった、という噂さえある。
兎:へえー。しかし、その噂が本当だとすると、突然都知事職をほっぽり出したことも、また国政へ復帰して自民党に対抗する第三極を作ろうと動き出したことも、どちらもうまく理解できるね。
亀:橋下さんは、もともと今回の選挙では、維新の会の「地固め」をすればよい程度に思っていた。今回自分が立候補しないのも、今回じゃなくその次の選挙が本当の大勝負だとふんでいたので、そのときに切れるカードをとって置くという意味でも、じわじわと攻めようとしていたわけだ。
兎:ところが、石原さんが動いたことで、そのじわじわ戦略を放棄せざるをえないところに、追い込まれちゃったわけだ。
亀:で、第二の誤算は、解散のタイミングだな。
兎:こんなに早く解散になるとは、思っていなかった、っていうわけだね。
亀:そう。おそらく、石原さんの動きを見て、野田さんの頭の中には、橋下さんの当初の計画に狂いが生じたっていうことが見えたんだと思う。別に、このことだけが彼の決断を生んだわけではないが、橋下—石原の連携がまだ整ってなく、そこにつけこむ余地があるとの読みが、野田さんの側の計算にあったこともまちがいないと思う。
兎:しかし、だね、第三極として力をもつためには、やっぱり橋下—石原の連携というのは不可欠じゃないのかな。だって、なんといったって、大阪と東京という二つの巨大自治体の首長同士が組んでいるんだから、これ以上の連携はありえないよ。
亀:さあ、そこだな。問題は連携の仕方だよ。橋下さんも石原さんも、既成政党の支配に風穴をあけようと、本来は地方の自治体の長としての彼らの実績を売り込みたいわけだ。だから、ありうる連携としては、地方政党がゆるやかに連携するという形の方が効果的だったような気がする。
兎:なるほど。ところが、いま行われていることは、むしろ「極」をつくるということにこだわっちゃって、非常に中央集権的なもうひとつの政党を作るかのように動いているように見えるね。
亀:ところが、日本維新の会の、国政政党としての実績はゼロ。
兎:いいのかね、橋下さんは、このままで。
亀:どうだろうかね。みんなの党と組みたいというのは、地方政党ゆるやか連携路線ではなく、国政路線まっしぐらのようにもみえるが、実はみんなの党と組むことで石原さんの個人的な影響力を薄めようという狙いもあるような気がする。いずれにしても、彼の当初の計画通りにことが進んでいないことが、この第三極をめぐる動きをばたばたしたものに見せているってことは、間違いないと思うな。