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政治家とプライベート情報

ブログでも、(最近始めた)ツイッターでも紹介した、ボクのお気に入りのShields and BrooksというPBSの番組の中で、政治家と有権者との関係について、ブルックスさんが興味深い分析をしていた(http://www.pbs.org/newshour/bb/politics/jan-june12/shieldsbrooks_04-20.html)。
ご存知かと思うが、共和党の大統領候補ミット・ロムニーは、しばしば、有権者と「connect」していない、と批判されている。メッセージが伝わってこないとか、何を考えているかまったくわからない、という意味である。その理由として、彼がものすごい大金持ちであるということ、あるいは彼がよく意見を変える人(flip-flopper)であることがよく指摘される。しかし、ブルックスさんは、その最大の原因は、彼が自分の生い立ちについて、家族について、語らないからではないか、といっている。彼の父親は、メキシコからの移民であり、また彼はモルモン教の信者である。こうした部分を語ることが、もしかすると共和党という保守政党の候補としては、マイナスに働く可能性はもちろんある。しかし、これらの、いってみればプライベートな部分について語らないがゆえに、彼はいつまでたっても有権者とconnectできないのではないか、とブルックスさんは分析するのである。
ひるがえって、自分のことを考えてみる。ボクがそもそもブログを始めたのは、ゼミ生たちに、自分のプライベートな部分を少し(もちろん全部ではない)見せることによって、文字通り彼らとconnectすることができるのではないか、自分が授業で伝えたいメッセージとか自分の考え方のようなものが通じやすくなるのではないか、という動機からであった。
そして、最近になってボクがツイッターをはじめたのも基本的には同じであり、すこしずつではあるが新聞やテレビに出させて頂くようになったので、読者や視聴者の人にボクという人について若干情報量を増やすことで、connectionがうまくいくのではないか、と思ったからである。
もういちどひるがえって、日本の政治家たちのことを考える。橋下さんがいま人気があるのは、彼が自分の人間性(たとえばけんかっ早いところとか)をちらりとみせているからではないだろうか。かつて小泉さんが絶大な人気を誇ったのも、「なんとか」の一つ覚えのように、郵政民営化、郵政民営化と繰り返して、この人本当に「なんとか」かもしれない、あるいはこの人やっぱり変人だわと、有権者に思わせるような演出に成功したからではないだろうか。そして、いま首相である野田さんが一時期支持率を高くできたのも、自分をどじょうにみたて、ルックスにある種のコンプレックスをもっていることをちらりと垣間見せたからだったのではないか。垣間見せた内容が重要なのではない。(なんでもいいから)垣間見せることによって、有権者がその人を知った気になり、安心する、という効果が重要なのである。
ここには、プライベートな情報を信憑性をもって公開すると、公開した側が大きなアドバンテージを握れるという(どこかで聴いたことのあるような)法則が働いているように思える。しかし、話はそう単純ではないかもしれない。というのは、政治家が、本当に自分のプライベートな部分を見せている、とはどうしても思えないからである(というか、人間はだれでも、本当に自分のプライベートな部分を公開するわけがない)。つまり、有能な政治家は、こうした演出を演出として、演じきっているのであり、ある意味で、有権者はそのような演じきる能力を評価しているのかもしれないのである。