中毒患者は屁理屈をこねる
何を隠そう、ボクは、マクドナルド中毒患者の一人である。
毎日食べなければ気が済まない、というわけではない。
毎週食べなければ気が済まない、というわけでもない。
しかし、月に一度ぐらいは、どうしても食べたいときがやってくる。そうなるともう、いてもたってもいられない。食べるまで、食べたいという衝動がおさまることがない。
ボクの場合、その衝動は、たいてい夜にやってくる。どういうわけか、さあ寝ようか、という時間に、突然、やってくる。それゆえ、衝動は、どうしたって次の日まで持ち越される。で、次の日の午前中は、文字通り中毒患者のように、「ああ食べたい」「うーん食べたい」と、念じ続けることになる。
マクドナルド中毒にかかる原因の一つは、「犬も歩けば、マクドナルド」という感じで、実に多くの店舗が展開されていることによる。これが東京に一店舗しかない店だったすれば、「食べたいな」と思っても行くのが面倒くさかったりして、すぐさま諦めがつく。ところが、とくに首都圏では、どこにいようとも、マクドナルドで昼食を取ろうと思えば、取ることができてしまう。だから、食べたいなと思ったが最後、食べるまで、衝動はおさまらない。
実は、つい先日(今年になって初めてのことであったが)、とうとう禁断症状がでてしまった。で、妻に、「ごめん、そういうことなんで」と説明し(←?)、買い出しにいった。
ボクは、マクドナルドでは、かならずビックマックセットを注文する。
その日も、そうすることにした。ただ、その日は、ちょっとした事件が起こった。
かつて、マクドナルドでは、セットのドリンクでジンジャーエールを選べた時代があった。コーラやコーヒーだとカフェインが入っているし、オレンジジュースとビックマックでは、相性がよくない(と、ボクは勝手に思い込んでいる)。ところが、その日、ボクは店員さんに「すみません、もうジンジャーエールはやってないんです」といわれてしまった。
そうか、じゃ、しょうがない、「コーラでいいです」、ということにして、代金を払い、紙袋をさげ、ルンルンと引き返してきた。
さて、家に戻り、ポテトをつまみながら、そのジンジャーエールの話を妻にしたところ、「あら、この前の時も、まったく同じこといわれて、コーラにしてたわよ」と、彼女がいう。
「?」
「物覚え、悪くなってきたんじゃない?」と、彼女は心配そうである。
「ちがう、ちがう。こういうのってのは、いらない情報を、なるべく覚えないようにしているだけのことなんだよ。」
「いらない情報?」
「そう、世の中のどうでもいい情報を、覚えないように、ボクの脳はトレーニングされているのさ。」
「いらない情報ってことはないでしょ?だって、この前のこと覚えてたら、カウンターで同じ間違いをしなくてすんだんじゃないの?」
「いや、いや、そんなことはない。だってだよ、マクドナルドは、もしかしたら、将来、ジンジャーエールのサービスを再開するかもしれないじゃないか。もしそうなったら、ジンジャーエールがないと思い込んで注文すると損した気分になる。だから、この場合、情報を覚えないようにするという方が、よっぽど合理的なんだよ。」