モントリオール初体験
用事でモントリオールを訪れた。
モントリオールは、カナダのケベック州でもっとも大きな街である。
最初のうちは、飛び交うフランス語に戸惑い、誰かに話しけるとき自分が英語しかしゃべれないことに罪悪感をもってしまった。しかし、本国フランスと違って、ここでは英語で話しかけてもあからさまにいやな顔をする人は少ない。だんだん慣れてきて、この町の魅力を堪能することができた。
まず行ったのは、McGill大学のキャンパス。丘のようになっていて、どこかカリフォルニアのバークレーと似ている。といっても、夏だからで、もちろんここの冬の寒さは、温暖なバークレーとは比べ物にならない。その証拠に、McGillのキャンパスの主要な部分は、(外気にふれないで移動できるように)地下トンネルでつながっているのだそうである。冬訪れたら、まったくちがった印象をもっただろう。
それから、セントキャサリン通りでショッピング。その脇道の、上から通りを見下ろすように立ち並んでいる、にぎやかなバーやカフェなどを見物。古くからあるといった感じのベイカリーでパンを買って食べたり、教会や美術館などの古い建築物を眺めたりして、ぶらぶら歩いた。
モントリオールでは、いくつかのレストランで食事をした。「はずれがない」と人からいわれていたので、ネットで調べるまでもなく、気の向くまま入った。ただ、日本食だけは、チェーンのsushi shopのようなところはさけて、ちょっと調べて日本人シェフ・オーナーがいる店を選んで行った。サーモンのにぎりがとってもおいしかった。大西洋のサーモンだなと思った。
洗練された東部の都会だからなのか、モントリオールの人々はそれほどフレンドリーではないなとも感じた。カフェやレストランなどでは、ひとつひとつのテーブルが小さく、隣りのテーブルとの距離が近い。だから自然発生的に隣りに座った人たちと会話がはずむのかと思いきや、そんなことはまったくない。しかし後から、もしかすると、これはフレンドリーさに欠けているわけではなく、ある種のエチケットが確立されているからなのではないか、と思うようになった。否応なく隣りの人たちの会話が耳に入ってきてしまうので、無視しているかのように振舞わないと、興味本位で聞き耳を立てていると思われてしまうかもしれない。だから、わざと冷淡に、「あんたたちのことなんか、ぜんぜん気になんないんだから」みたいな態度をとっているのではないか、と。
それにしても、モントリオールには、美男美女が多い。ウェイトレスさん、バリスターさん、自転車に乗っているひと。横断歩道を歩いているひと。みんな垢抜けて、おしゃれである。人にこびるところなく、それでいてツッパリすぎているわけでなく。
前に、ボクの教え子でこの街に育った人が、モントリオールほどよいところはない、と愛国心ならぬ、愛街心にあふれて、熱く語っていたのを思い出した。古い伝統を大切にし、多くの文化が融合し、それでいて寛容である。何より、エネルギーがあふれていて、すばらしいと思った。