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Night Ride Home

それは、ある7月4日のこと。場所は、ハワイ。
独立記念日の晩、どこかで開かれていたパーティから、恋人と二人で車で帰るところ。
「たまにあるのよね、大きくて青い月の下に、こういう夜がやってくることが・・・」と、語りかけるように、その唄は始まる(“Once in a while, in a big blue moon, there comes a night like this・・・”)。
アコースティックギターの音と、夜に鳴く虫の声がバックに流れる。
唄の題名は、Night Ride Home。唄っているのは、ジョニ・ミッチェルである。
ジョニ・ミッチェルについてはすでに何度かこの日記でも書いてきた(たとえば2007年3月3日付「『雲と愛と人生と』の話」参照)。しかし、何度書いてもいい足りないほど、彼女の音楽は本当に素晴らしい。
で、その中でも、最近のボクのお気に入りは、このタイトルソングがはいっているアルバムである。
ボク自身、3月にハワイへ行ってきて、その余韻がまだ残っているせいだと思う。
ハワイの、平和で静かで美しい夜の風景が想いだされる。
地元のバンドが、大きな木の下で演奏している。その向こうには、夜の散歩を楽しむ人々。さらにその向こうには、ホテルの光が波を白く映し出す。
一日を終えて、若いカップルは手をつないで音楽を聴いている。
歩んできた人生を振り返って、老夫婦はゆっくりグラスを合わせている。
そして、その日ホテルで行われた結婚式に参加した小さな子供たちが、綺麗なドレスやタキシードを着飾ったまま、芝生を駆け回っている。
そう、そうしたハワイの光景の非日常性が、まさに「たま(once in a while)」にしか訪れない、という唄の冒頭のフレーズによって切りとられているように感じられる。
ジョニ・ミッチェルは、このNight Ride Homeというアルバムがつくられた当時、Larry Kleinという音楽家と結婚していた。そして、この唄は、二人でおそらくバケーションを過ごしていたハワイで、本当にあったロマンチックな夜を、再現したのだといわれている。
フラダンスを踊っている女性。ウクレレを持った男。独立記念日を祝って打ち上がる花火。
でも、隣には自分が愛する男がいる。
「I love the man beside me」
その気持ちを、その自分の感覚を、何度もかみしめる。
自分たちの車以外、だれもいない道を、ドライブしながら。
めまぐるしい仕事や忙しい文明から遠ざかって、自分たちの家へ向かいながら。
「night ride home・・・night ride home・・・」
最後まで、虫の声は鳴り止まない・・・
「night ride home・・・」