リゾットの顛末
この前から、リゾットを作りたいとずっと思っていた。どういうわけか、冷蔵庫に使いかけの粉チーズが3本も並んでおり、そのうち1本ぐらいは使い切らなきゃ、とずっと気になっていたというのが主な理由である。あと、フェアジョン先生に、つくり方のコツを教えてもらったというのもある。結構強火でかき混ぜない、というのがアドバイスであった。
リゾットを作るためには、綿密な計画と下準備を必要とする。
ボクの場合、リゾット作りの全行程は、一日目と二日目との二部に分かれる。
一日目。ボクはリゾットをチキンスープで作るので、まずはそのチキンスープを用意しなければならない。大きな鍋に水を入れ、鶏のモモ肉とガーリックを丸ごと全部薄く刻んだのを放りこんで、月桂樹の葉っぱと塩コショウで味付けして、コトコトとやりだす。しかし、リゾットに使うのは、このうちの4分の1ぐらいである。なので、煮立ったところで、そのぐらいの分量を他の容器に移す。もちろん鍋に残っている鶏肉がもったいないので、そこに長ネギ、ニンジン、椎茸、をいれ、時間を見計らってジャガイモを入れて、ネギが柔らかくなるまで待つ。一日目は、そのスープと具を食べる。そう、だからリゾット作りの一日目は、実はリゾットにはありつけないのである。しかし、これは計画通り。おいしいリゾットを食するのは、次の日のお楽しみ、というわけである。
二日目。ようやくリゾット作りに入る。別容器に移しておいたチキンスープを冷蔵庫から取り出す。もし脂肪が浮いているのが気になれば、それを取り除いてもよい。おー、順調、順調、これで今日は美味しいリゾットが作れるぞ、とわくわくしてくる。次に、玉ねぎを細かく切る。そして鶏のササミ。これも小さめに切る。どちらもあまり量が多くてはいけない。さて、ここにガーリックを細かく刻んでフライパンで炒めて、コメを入れて、スープを足していけば、出来上がりなはず・・・、おー、やったね、もうすぐもうすぐ・・・。
・・・と、そこまではすべてが計画通りに進んでいる感じであった。
ところが、ですね、そこに思いがけない落とし穴が待っていたのでありました。
歯車が一個、かみ合わなかった、というか、足りなかった、のであります。
それは何かといえば、ガーリック。
ボクは、なんとガーリックをまるごと全部、きのうのスープを作る段階で使い果たしていたことに、その時点で気づいたのであります。
あちゃー、もう遅いじゃんか。玉ねぎとササミ、切っちゃったじゃんか。フライパンにはオリーブオイルを引いちゃってあるし・・・。あーあ、どうするんだよ、ガーリックが入っていないリゾットなんて、ありえないぞ。あたふた、あたふた・・・。
しかし、ここでボクは、はたと、とってもいいアイディアを思いつく
ガーリックの代わりに、カレーパウダーを入れるっていうのは、どうだ、と。
うん、そうだ、カレー味なら強烈なので、誰も(←といったって、食べるひとはボクしかいないのであるが)ガーリックが入っていないことを気にしないはずである。
で、これが大正解で、とっても美味しいカレー味リゾットができあがった。
というわけで、うーん、やっぱりオレは天才だな、料理ってのはこうして臨機応変にできなきゃいけない、などと食べている最中は悦に入りながら、すべてをきれいに平らげたのでありました。
・・・と、その自己満足からさめたころ、別のことに気づいてしまった。
カレー味のせいで、ガーリックの不在が気にならなかったばかりでなく、その夜結局ボクは粉チーズをまったく消費していなかったのであった。