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大井町の意外と一興

ボクにとって、大井町はいつも「通過駅」であった。
京浜東北線から大井町線に乗り換えるときに使う駅。ただ、それだけの駅。
降りたこともないし、当然どんな店があるのかも知らない。
ところが、友人でボクのテニスのコーチであるO君は、「先生、大井町いいっすよ、なかなか。捨てたもんじゃないっすよ」という。彼は、長らく仕事場が大井町の近くだったので、美味しいところをいろいろ知っている、というのである。
というわけで、行ってきました、大井町。
場所は、とある焼き鳥店さん。面子は、O君はじめ、テニス関係者4名。
まず頼んだのが、マグロのぶつ切り。みたところ、なんの変哲もない、ちょっと普通すぎるくらい普通の赤身のマグロなのに、脂の乗り方が完璧でした。
「ホントだ、いいねえ。美味い、美味い」と褒める。
ついで、出てきたのが、キャベツ。これも、なんの変哲もないキャベツ。ザルの上に、どかどかとチギッてあって、ごま油と塩がかけてあるだけ。ところが、それがいける。
「ほう、なかなか」などといいながら、バリバリ食べてる。
それから、お任せで何本か頼む。手羽先、モツ、ハラミなどがでてきた。お好みでワサビをつけて食べる。「なるほどなるほど・・・結構いけるね・・・うん、なかなか・・・」。つべこべ言いながら、もうすっかりこの店のファンになっている。
そして、O君が「ミンピー」なるものを注文する。
ミンピー?
ミンチのミンに、ピーマンのピー。つくねをほぐし、それを半分に切ったピーマンで巻いて食べるのである。ピーマンには、軽く塩が振ってある。
これが最高に美味かった!
「うまい!これ、うまい!」を連発。
いや、本当に大井町は捨てたもんではない。
雰囲気も、一興であった。
その店では、常連と思しき客が、カウンターでひとりずっと飲んでいた。
どうみても、あんまり肝っ玉の大きそうな男ではない。後から入ってきたもう一人のシングル客に、なにかご馳走して、自己完結的に喜んでいた。
そしてこの男、一生懸命、外国人と思しき店員さんを口説いていたのである。
しかし、その口説き方が、なんとも中途半端であった。「・・・・ナントカカントカナントカ・・・(君)ほんと、可愛いよね。じゃ、今度、ボクとデートしようか」。
あのねぇ、「じゃ」じゃないでしょ。「デートしようか」じゃなくて、「デートして下さい」でしょ。
なんで正直に、堂々といえないんだよ。はずかしいのかよ、その歳にもなって。
で、帰るとき、その客は、女から「じゃ、また明日ね」と声をかけられていた。
そうか、この情景はここで毎晩起こっているんだ。そう思うと、情が通っていて、微笑ましく思えてくるのであった。