バイキングという食事形式
「バイキング」という食事の形式がある。カッコよくいうと「ビュッフェ」スタイル。ぶっちゃけていうと「食べ放題」スタイル。一定の額を払ったら、食べるだけ食べていいですよ、という形式である。
ホテルに泊まると、朝食がこの形式になっていることが多い。日本では、ある程度の規模のホテルだと、たいてい洋食と和食の両方が用意されている。ところが、どちらのメニューもふんだんにバラエティーに富むのならいいのだが、和食も洋食もと欲張るがゆえに、どちらも品薄な場合がある。オイオイ、どっちかに特化すれば、もっと充実するのに、と思うことも多い。
この前、赤坂のプリンスホテルで食事を取る機会があったのだが、そのとき、たまたまケーキのバイキングをやっているところに遭遇してしまった。噂には聞いていたが、本当にケーキバイキングなるものがこの世の中にはあるのである。そして、噂には聞いていたが、本当にケーキを4つも5つも(あるいは6つも7つも)平気で平らげてしまう女性がこの世の中にはいるのである。あたりを見回すと、全員女性。下は女子高生の4人組ぐらいから、上は結構ご年配の3人組まで。みんな楽しそうに、そして満足そうに、次から次へとケーキを平らげていた。
さて、先週、ゼミの卒業旅行に上越国際へスキーに行った。その夕食は中華のバイキングであった。ウェイターさんがやってきて「ソフトドリンク類は無料でついてきます」と軽くご挨拶を終えると、用意ドン、みな一斉に食べ物の方へむかう。ボクはてっきり個人競技だとおもっていたら、学生たちは団体競技のように役割分担をしていた。大根もちを持ってくる人、春巻きを持ってくる人、シュウマイと小龍包を持ってくる人・・・・。なーるほど、大人数だと、そういう手もあるわけだ。
バイキングという形式の食事は、われわれの脳の活動を活性化する。たとえば、ですね、われわれは食事を取りながらも、必ず頭のどこかで、いったいこのレストランは一人当たりどのくらい食べると見越して、価格設定をしているのだろうか、と考えている。そして、自分の食べている量がそれとどのくらい見合っているか、などと比較している。それから、どの品目からどのような順番で食べたら、もっとも効率的か(←つまりよく元が取れるか)を探っている。出ている品々を見渡して、自分の頭の中で一瞬のうちにメニューを組み立て、それにしたがって自分の選ぶ品目の適量をひとつずつ計算している。
バイキングでは、頭だけでなく、気も使う。本当にこんなにいっぱい食べちゃっていいのだろうか、と周りの目が気になる。逆に、となりのテーブルの人たちはどのくらい食べているか、何を食べているか、などというのも気になる。さらに、自分の皿に少し食べ残しがあってもウェイターさんがちゃんと片付けてくれるだろうか、などと心配になる。それから、自分の好きな品目が品薄になっていると、早く追加をもってこいよ、などとイライラしたりする。
正直いうと、ボクはバイキング形式の食事があんまり好きではない。
食事の時ぐらい、頭も使わず、気も使わず、リラックスして食べたいからである。