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Seinfeld

知っている人は知っているが、ボクは将来シナリオライターになりたいという夢をもっている。半年間、表参道にあるその筋のスクールに通ったこともある。毎週課題を提出して、添削もちゃんと受けた。なので、一応、シナリオの書き方の最低限のルールは知っているつもりである。あとは、時間さえあればなあ・・・。うん、ホント、時間さえあれば大作が書けるのになあ・・・。ま、早稲田に就職している限りは、そんな時間に余裕のある生活なんて、どう考えてもできそうにないけどね。
さて、ボクの書きたいシナリオは、コメディーである。ボクは、以前から、日本のコメディーは、ドタバタや会話の妙で笑わせるものばかりで、ストーリーの展開で笑わせるものがないという不満を持っている。それに比べると、アメリカのテレビのシットコムは、本当によく考えられている。ボクのお気に入りは、Cheers、Mad about You、Will and Grace、そしてFrasierなどなど。実は、ボクのうちには、これらのDVDが買い揃えてある。「勉強」のつもりで、ときどき見ては、笑わせてもらっている。
しかし、中でも圧倒的に好きなのは、Seinfeldである。このシットコムは、Jerry SeinfeldというコメディアンとLarry Davidというプロデューサーの手による傑作である。これまでのところ第6シーズンまで、DVDが発売されている。もちろん、北米にいけば、いまでも再放送を見ることができる。
Seinfeldが他のコメディーと違うのは、ばかばかしさに徹しているところである。Cheersにせよ、それを受けて作られたFrasierにせよ、どこかウエットな部分を持っている。家族や恋愛問題、あるいは老いることについてのメッセージがあって、ちょっと考えさせたあとで笑わせるという仕掛けが見え隠れする。またMad about Youには男女のあいだの平等に関しての、さらにWill and Grace にはゲイに対する差別とかに関してのメッセージがあって、どこか現代社会を風刺してやろうという思惑が見え隠れする。Seinfeldには、そのような仕掛けや思惑が一切ない。もう最初から最後までばかばかしいストーリーの展開があるだけである。これぞ本物のコメディー、コメディーとはかくあるべしというようなコメディーなのである。
アメリカの知識人でSeinfeldを知らない人はいない。Seinfeldを囲む3人の友人George、Elaine、Kramerという登場人物が誰なのかを知らない人もいない。ボクは、Seinfeldなしに現代アメリカ文化を語ることは不可能であると思う。実際、このコメディーについては、まともな政治哲学者が研究書まで出しているほどである。
Seinfeldは、英語の慣用句を新たにいくつも世に送り出したことでもユニークである。これらの慣用句は、いまでは会話の端々に普通に使われている。yada yada yadaとか、Master of Domainとか、sponge-worthyとか。こうした慣用句の多くはセクシャルな意味合いを持っているので、カクテルパーティなどで隠語として使えて、とても便利である。首相になった安倍さん、訪米する前にいくつか覚えて行ったらどうですか?ウケると思いますよ。