Law and Order
ボクは、日本のテレビドラマはほとんど見ないが、アメリカのテレビドラマは大好きである。アメリカのドラマの中には、「ER」のように、日本で(数年遅れで)放映されるようになるものもあるが、向こうでしか見ることの出来ないシリーズも多い。
一般に、アメリカで人気のあるドラマは、ディテールが実に正確である。警察モノ、弁護士モノ、病院モノ、政治モノなど、どのような分野をとっても、その道の専門家を何人も雇って、練りに練った考証をしている。たとえば、ERでよくある場面だが、患者が担架にのってかつぎ込まれながら、取り囲む医師や看護婦たちが薬の名前を早口でいったり、病名を患者にわからないようにコード名でいったりすると、当然英語についていけないボクには何のことやらわからない。しかし、普通のアメリカ人だって、そんな会話にはついていけないのである。それがリアリティーを高めている。医者とか看護婦の知人たちにいわせると、そういったシーンは本当に正確に出来ているそうである。
中でも、ボクが大好きで、いまでも北米に出張するときに再放送を楽しみにしているのはLaw and Orderという、NBC系列で放映されているものである。大当たりを続けていて、いろいろ姉妹編も登場するようになったみたいだが、いちばんはじめにこのシリーズを見たときは、とっても斬新な構成と内容にびっくりしてしまった。まず、前半と後半で、活躍する主人公がまったく違うというのに驚いた。前半は刑事たちが事件の犯人を突き止めることを中心にストーリーが展開する。後半はその容疑を立件する検事たちが主人公である。ニューヨークを舞台にして、政治家の汚職、人種差別、貧困、連邦警察との縄張り争い、ゲイ、麻薬など、時事的にも重要な問題が扱われていて、製作者たちが高い社会性をもって番組作りをしていることがよくわかる。そして、法律に詳しいひとがみていても、後半部分の中で繰り広げられる法律解釈の内容は緻密で、先例なども間違いなく引かれているという。番組のために、一流のロースクール出身のアドバイザーが何人もスタッフとしてついているのだそうである。
後半部分の中心人物は、州の次席検事で、ジャック・マッコイという人物をサム・ウォーターソンという俳優がもうずいぶん長いあいだ演じている。しかし、ボクは初代の次席検事ベン・ストーンを演じたマイケル・モリアーティーが大好きだった。相手の弁護士に対して絶対に妥協せず、時には上司とも衝突する一途な頑固さに、自分こそが社会秩序の番人なのだという自覚がよくにじみ出ていた。陪審員を前にすっくと立って最終弁論を滔々と述べる姿も、なんともカッコよかった。その最終回の場面は、いまでも強烈な印象に残っている。ベン・ストーンは、ある女性を説得し、身の安全をちゃんと保障するからといって、証人として法廷で証言させた。その晩、報復として、その女性はロシアマフィアに殺されてしまう。それで彼は、辞職を決意するのである。
Law and Orderは、番組の中でほとんどBGMが使われないで、淡々と話が展開していくところもよい。このあたり、日本で人気の韓流ドラマとは、どうも反対の方向性をもっているような気がしてならない。