« 名前について(その3) | メイン | 似ている、ということ »

ボクの好きなライブアルバム

スタジオ録音とライブ録音とでは、やっぱり根本的にちがう、という感じがする。まあ、そんなの当たり前といえば、当たり前だけどね。ボクは、スタジオ録音の音楽を聞くと、ライブにくらべて、どうしても緊張感という点で劣っていると思ってしまう。失敗したってどうせ後から音をかぶせられるじゃないかという先入観がこちら側にあるもんだから、なかなか心底から感動することがない。しかし、ライブ録音、とくに「いわくつき」のコンサートを録音したものは、いずれも、物凄い緊張感がみなぎっていて、楽しめる。
1938年、殿堂カーネギーホールにおいて、はじめてジャズを演奏したのは、ベニー・グッドマンであった。その演奏をまとめた2枚組を、ボクはときどき聴く。マイク一本で録音されたもので音質はひどいが、にもかかわらず、いつ聞いてもすさまじい迫力を感じる。その時、演者として、デューク・エリントンではなく、またカウント・ベイシーでもなく、ベニー・グッドマンが選ばれたのは、彼が白人だったからだといわれている。エリントンらそうそうたる黒人のジャズミュージシャンたちは、観客席からベニー・グッドマンを見守っていた。そんな中、ベニー・グッドマンと彼のバンドは、一世一代の素晴らしい演奏をした。ライバルたちが見守るプレッシャーが、この名演奏を生み出したのである。
解散する前のMJQのラストコンサートも、ボクのお気に入りである。最初に収録されているSoftly as in the Morning Sunriseの、なんとおごそかなことか。これから最後のコンサートをやるんだという、決意のみなぎった演奏になっている。そして、なかほどまでくると、4人は、グループとして最後となる演奏を楽しんでいるかのようである(←実は後に再結成されることになるが・・・)。たとえば、Skating in Central Park。ゆったりとして、聴いているものをニューヨークでスケートをしている気分にさせてくれる。さらに、なんといっても極めつけは、アンコール曲のBag’s Grooveである。ジョン・ルイスのピアノ、パーシー・ヒースのベースのソロを、ボクは何度お風呂の中で口笛吹いたことか。
ボブ・ディランを聴くときは、Before the Flood、日本語では「偉大なる復活」というタイトルがついている2枚組である。バックを担当しているザ・バンドのUp on Cripple CreekやI Shall Be Releasedも秀逸の出来だと思う。しかし、何より、ディランが、Don’t Think Twice, Its All Right、Just Like a Womanの2曲を、彼のギターとハーモニカだけで続けて歌うところが、最高の聴きどころである。
ライブは、映像がなくても、十分その場の張り詰めた空気が伝わってくる。しかし、映像があると、やはりその場との一体感が高まる。この前、ボクはフンパツして、キース・ジャレットの2002年の東京ソロコンサートのDVDを買ってしまった。実は、東京ソロは、たとえばケルンなどと比べるとあんまり評判がよくない。たしかに、現代音楽の音階が多くて、ボクなどにはついていけないところがある。でも、その中でも、最後の方に収録されているPart 2dは、本当に素晴らしい。こんな美しいメロディーがどこから出てきちゃうのだろう、と思ってしまう。ボクは、聴いているうちに自然にポロポロと涙を流してしまった。みなさんも、ぜひ聴いてみてください。