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長嶋茂雄

ボクの永遠のヒーローは、長嶋さんである。
ボクが野球のユニフォームを最初に作ったのは、たしか小学校3年か4年のときであったが、もちろん背番号は3番だった。袖にはオレンジ色でgiantsの文字。おそらく、その頃、世の中に出回っていた少年野球ユニフォームの半分ぐらいは、背番号が3だったのではないか。それくらい、長嶋さんは、ボクら少年たちのあこがれであった。
東京ドームの前身は、後楽園球場といった。そこに、ボクは1年のうち2-3回、ジャイアンツ戦を見に行っていた。幼心に「ここで打ってよー」と祈ると、長嶋さんは必ず打ってランナーを返してくれた。幼心に「これ取ってよー」と念じると、ボールはちゃんと長嶋さんのグラブの中におさまっていた。そんな人は、あとにも先にも、ほかにいない。だから、彼は、ボクにとって永遠のヒーローとして、心に刻まれている。
つい先日、長嶋さんをお見かけした。
実は、今回は、言葉まで交わしてしまった。
場所は、あの文化理髪。
その日、ボクは4時に予約をいれていた。店に着くと、店主がいつもの窓側とは違う席にボクを案内する。一瞬「あれ?」と思ったが、機材でも調整してるんだろうぐらいに思っていた。で、散髪が進む中「このごろ、監督お見えになるの?」と訊いてみた。すると、「いや、実は、今日、4時過ぎに来ることになってるんですよ」という。
「ええっー!!!!!」
そういえば、長嶋さんを担当するもう一人の理容師さんが、そわそわしている。窓側の席は、今日はVIP席に早変わりしている。そして、なんとなく、ボクの髪を切っている店主にも、落ち着きがない。床の上に散乱しているボクの髪の毛を、頻繁に掃除して片付けている。で、そのたびごとに、ちらちらと、時計を気にしている。
ボクが座った席は、入り口のまん前の席である。つまりボクは長嶋さんが店に入ってくると、鏡ごしに彼と真正面に向かい合う位置にいる。こんな絶好な機会はない。今日は、何が何でも、なんとか大きな声で挨拶だけしよう、と決心する。もうそれからは、こちらもドキドキ、そわそわ。もう4時15分だぞ・・・ドキドキ・・・あれれ、もう4時半だぞ・・・そわそわ・・・まさかもうこないんじゃないだろうな・・・ドキドキ・・・そわそわ・・・
しかし、みなさん・・・(松平アナ風に)ついにそのときがやってきました・・・。自動ドアが開いて、長嶋さんが入ってくる。ドキドキは最高潮に達する。「こんにちわー」と、ボクが大きな声でいい、大きくお辞儀をする。すると、長嶋さんも、「あ、こんにちわー」といって、ボクをみる。目と目がしっかりと合った。やったー!ついに、言葉を交わした。目線まで交わした。長嶋さんは、ボクに、ボクだけに「こんにちわー」って、いったんだからね♪
今度の日曜日、ボクの入っている草野球チームの試合がある。
ボクの背番号は、いまでも、もちろん、3番である。