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2013年04月13日

あらためて、三権分立について

昨夜、BSフジ・プライムニュースに出演させて頂いた。ただ、反町キャスターがお休みで番組全体のリズムがいつもと違ったということ、そして特に後半ゲストの園田博之さん(維新の会)の話し方がゆったりとしていたことがあって、結構ボクが自説を展開することになってしまった。ボクとしては重要なことをいったつもりであるが、舌足らずだったことを反省し、以下にメモに書き留める。
まず、衆議院の一票の格差についての最高裁判決の中に、以下の一文がある。
「1人別枠方式が・・・選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたことは明らかである。」
この見解が、現在民主党などが自公政権の提案である「0増5減」では不十分と批判する際のひとつの根拠となっていることは、周知の事実であろう。
しかし、この最高裁の見解は、間違っている。
政治学的に、というか、因果関係を特定する科学的言明として、間違っている。
たとえば、(わかりやすくいうと)もし小選挙区の定数が300ではなく1000だったら、1人別枠方式を採用していたとしても、その効果を消し去るように較差の生じない配分をすることは十分可能となる。もちろん、逆に、たとえば小選挙区の合計が47議席だったら、すべての都道府県は自動的に割り振られる1議席しかもらえないことになり、較差は拡大する。
このごく単純なシミュレーションからも明らかな通り、1人別枠方式は、けっして較差を生じさせる「主要な要因」ではない。それは、小選挙区の定数を現行の300とする与件のもとでは、そのひとつの要因であるにすぎない。
前にもこのブログで述べた通り、司法は、一票の較差に不平等が生じていることについて、憲法違反の警鐘をならす役割を担っている。しかし、どのような選挙制度を採用するかということは、立法府の裁量に委ねられるべきであり、それについて裁判所が口を挟むことは三権分立の原則からして慎まなければならない。
ところが、この最高裁判決は、小選挙区制を採用し、そこに300という定数を設けることについてはいっさい批判めいたことを言わず、つまりそれは制度としてオーケーだと認めておきながら、他方、1人別枠方式はオーケーではない、といっている。これは、明らかに司法府がみずからの権限を超えて、どのような制度が望ましいか、あるいは望ましくないかという立法機能を(不当に)担おうとしているといわねばならない。
ところで、番組ではうまくいえなかったもうひとつの点がある。それは、現行の制度(公職選挙法)のもとでは、一票の較差訴訟は、各地域の選挙管理委員会を相手どって起こされることになっている、という点である。考えてみれば、これもおかしな話である。
選挙管理委員会は、行政府(総務省)のもとにある組織であり、選挙制度をつくる組織ではない。判決では、「国会の怠慢」が批判されているのであるが、その怠慢の当事者ではない組織が、訴訟の相手となっているのである。いってみれば、選挙管理委員会は、自分の瑕疵ではないのに、責任だけとらされている、という変な構図がここにあるのである。
しかし、だからといって、民主主義のもとで主権者たる国民が選んだ「国会」を、訴訟の当事者とすることも、当然できないであろう。この問題をどう解決するのがいいのかというと、あまりいい知恵が浮かばないが、選挙管理委員会を一票の較差訴訟の当事者とすることはしょうがないとしても、それは行政府からは独立した機関として、区割り審議など一部の立法機能を委譲したものとして組織化する以外ないのではないか、というのがボクのいまのところの見解である。それを(いまの会計検査院のように)憲法そのもので規定するか、それとも国会のもとに置くかは、憲法改正の争点として取り上げられるべき、重要なテーマであると思う。
なお、番組では、憲法改正について、とくにその96条改正をすることについても、自説を述べさせて頂いた。これについては、また日をあらためて書くことにしよう。