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2012年05月13日

政治家のサブスタンスとジェスチャー

(ビル)クリントンは、当時現職であったブッシュ大統領を破って当選し、42代のアメリカ大統領となった。クリントンは、選挙戦で必ずしも最初から有利だったのではない。しかし、彼の勝利を決定的にしたと言われているひとつの場面がある。それは、第2回目の討論会で、観客から質問を受け付けたときの、二人の反応の違いである。
その場面は、いまyoutubeでみることができる。4分あまりのクリップなので、関心があったら見て頂きたい。英語がわからなくても、二人のボディランゲージを見るだけで、ボクが言おうととしていることは、伝わると思う。

http://www.youtube.com/watch?v=7ffbFvKlWqE

質問者は、「財政赤字は、あなたがた二人の生活に、どのように影響したのですか」と尋ねた。もし、財政赤字が個人的な影響を及ぼしていないなら、あなた方がどのような政策を掲げたところで、この問題を解決できるとは信じられないではないか、というわけである
この質問に対し、ブッシュはまず一般論ではぐらかそうとするが、司会者が「いや、質問は、あなた個人が、この問題でどのような影響を受けたのか、についてです」とツッコミを入れる。しかし、それでもうまく答えられず、結局ブッシュはいらいらしてしまい、「質問の意味がわからない」という態度をとってしまう。
続いて、答えに立ったクリントンは、何をしたか。
映像を見て分かるとおり、クリントンはゆっくりと質問者の方に近づいていく。そして、ブッシュよりも、はるかにその質問者との距離を縮めておいて、その質問者に個人的に語りかけるように、答え始める。いかに財政赤字という問題が、自分に個人的に影響を及ぼしたのかを、である。この瞬間、クリントンは、このテレビでの映像を通して、多くの(それまでどちらに投票しようか迷っていた)国民の心をつかんだのだ、といわれている。
政治家は、いかに中味の素晴らしい政策を掲げたとしても、国民からの信頼がなければ、その素晴らしい政策を受け入れてもらうことができない。このブッシュ=クリントンの討論会の一場面は、それをきわめて見事に物語っている。
ひるがえって、日本の話。(ツイッターにも書いたが)今朝のNHKの日曜討論では、「一体改革」について、素晴らしい議論が展開されていた。サブスタンスは、そういう意味で、非常によかった。しかし、民主党の責任者である藤井裕久氏が、野党の質問や意見に対して(カメラアングルのせいかもしれないが)いつも「そっぽ」向いているようにみえた。このような態度をあからさまにみせてしまうことが、いかに国民の支持を勝ち取るうえでマイナスか、この人はまったく気づいていないようであった。
政治家にとっては、サブスタンスとともにジェスチャーも重要である。日本の政治が悪く言われる大きな原因のひとつは、このことに敏感な政治家が少ないからだと思うのである。