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カツカレーの話

ボクは、カツカレーが大好きである。
カツが好きである上に、カレーも好きなので、カツカレーは、ボクにとっては一挙両得、一石二鳥のメニューの代表格である。
それにカツカレーは、お得である。たとえばある店でカレーライスが750円、カツライスが750円だったとしても、カツカレーが1500円ということはまずない。800円とか、850円とか、ほんのちょっと割高に設定されているだけである。それで、両方を食べられるのだから、ボクにいわせれば、これを注文しない方がおかしい。
また、カツカレーは、リスク分散のメニューでもある。
たとえば、どこか見知らぬ店に入ったとしよう。このとき、カツライスでもなく、カレーライスでもなく、カツカレーを注文するのは、とても合理的である。カツが不味くても、カレーが美味ければ、救われた気持ちになる。カレーが不味くても、カツが美味しければ、諦めもつく。もちろん、カツもカレーも両方美味しければ、いうことはない。
しかし、カツライスを注文して、カツが不味かったらどうか。あるいは、カレーライスを注文して、カレーが不味かったらどうか。どちらも、救われた気持ちにもならないし、諦めもつかない。不確実性に直面しながら100パーセントのリスクを正面から引き受けようとする注文の仕方は、ボクにはまったく理解できない。
カツカレーを出す店には、二つの系統がある。ひとつは、カツカレーを出すときに、スプーンだけをつけてくる店。もうひとつは、スプーンと割り箸をつけてくる店。前者はカレーの延長にカツカレーを位置づけている店で、後者はカツライスの延長にカツカレーを位置づけている店なのかもしれない。カツカレーに、フォークとナイフがついてくる店というのは、ほとんどない。だから、カツカレーの場合、カツは切らないでそのままかじるか、あるいはスプーンでもって、ごしごし切るしかない。いずれにせよ、割り箸の出番は、あんまりない。
カツカレーがどう盛られているかでとても気になる点は、カツの上にカレーがかかっているかどうかである。もしかかっていないと、当然のことながら、カツの下にあるゴハンにも、カレーはかかっていないことになる。ということは、その部分のゴハンにかけるカレーをどこかから調達してくることが必要となる。食事に計画性が要求され、カレーの無駄遣いは許されないことになる。
だから、ボクは、カツの上にも、あらかじめカレーがかかって出てくる方がうれしい。そういうと、カツの上に最初からカレーがかかっていたら、カツのサクサク感がなくなってしまうではないか、という反論がすぐさま聴こえてくる。たしかにその通りである。しかし、そもそもカレーとカツを一緒に食べたいから、カツカレーを注文したのであって、この反論は的をはずしているように思う。
この前、カツの上にあらかじめカレーがかかってないで出てくるカツカレーの店にはいった。そうしたら、カツにトンカツソースをかけて食べているひとがいた。そうか、こういう人のために、スプーンだけでなく、割り箸が用意されているのかと、そのときはじめて納得したのであった。