Vancouver Unitedの赤と黒
午後5時半。
まだ、ほとんど選手たちは到着していない。
ボクは、ゴールポストにネットを張り始める。
白いプラスチックのバケツ。その中には、ネットを芝生に留めるための黄色いペッグが10数本と、そのペッグを打ち込むためのハンマー、そしてサイドネットの張りを良くするための赤いリボンが入っている。それらを一度全部外に出し、空になったバケツを逆さまにする。その上にのって、ゴールポストの上側の留め金に、ひとつひとつネットを引っかけていく・・・。
フィールドを振り返ると、コーチたちは、今日の練習のための打ち合わせをすませ、青やピンクのコーンを等間隔に置いてまわっている。
今年のVancouver United U-17女子チームは、コーチ陣がかつてなく充実した。ヘッドコーチのほかに、アシスタントコーチが3人。キーパー、オフェンス、ディフェンス、そしてフィットネスと、それぞれの担当がきっちり決まっている。
ボクがネットを張り終える頃までには、赤と黒のユニフォームを着た選手たちが、次々に到着している。芝生に車座になって、スパイクの紐をしっかり結びなおしたり、ストレッチしたりしながら、みんなで一時のおしゃべりを楽しんでいる。時々、あたりの静寂をつらぬく笑い声が、空に響く。
北米の一年のサイクルは、9月のレイバー・デイを基準にして始まる。レイバー・デイが過ぎると、サッカーシーズンもいよいよ本番を迎える。だから、8月の中旬から、選手たちは、夏休みでダレ切った身体を絞り込むために、ほとんど毎日のように、練習にはげむ。6時から8時まで、みっちり2時間。チームの当面の目標は、レイバー・デー前に前哨戦として組まれている親善トーナメントで、よい成績を収めることである。
いよいよ、練習が始まった。
赤と黒。黒と赤。めまぐるしく選手たちが動いている。
ときどき、コーチたちがその動きをピタリととめ、指示を出す。
そしてまた、赤と黒、黒と赤。赤と黒、黒と赤・・・。
ボクの娘は、VUの年齢別代表にこれまで6年間連続して選ばれている。6年ずっと選ばれているのは、ほかに5人しかいない。一緒にMFを組む運動量豊富なブリアナ、レフティーでディフェンスの要のヘイリー、堅実なプレイが定評でPKをはずさないサラ・L、背が低いのにヘディングシュートのうまい意外性のサラ・M、そして天才キーパーであるにもかかわらずFWをやりたがるグレタ。みな類まれな女性アスリートたちであり、その一方でまた、みなごく普通のティーンエイジャーでもある。
3年前、VUは、レイバー・デーのトーナメントで優勝した。しかし、残念ながら、このところの成績はかんばしくない。本番のシーズンでも、なかなか勝てず、最近は負け犬チームのレッテルさえ貼られている。州の島部にはいくつも強いチームがあるし、ライバルの隣町バーナビーもなかなか侮れない。
今年は、コーチ陣が充実したし、期待できるFWとMFの新たな戦力も加わった。だからなんとか、リベンジを果たしてもらいたいものだ。Go red! Go black! Go~~ Vancouver United !!!