Clever phrases
北米に長い間過ごした経験のある人なら誰でも経験することだと思うが、こちらではときどき思いもよらない場面で、なかなか気の利いた英語の表現に遭遇する。この夏も、ボクはそういう表現にいくつも出会った。こういうのも、記録にとどめておかないと忘れちゃうので、紹介しておこうと思う。
まずはretail therapy。恋の病にとりつかれた娘に対して、仲のよい友人がYou need a retail therapyと慰めていたのを聞いて、うまいことをいうなあと思った。日本語でいうと、ストレス解消のための買い物、ということだが、買い物ではなくセラピーの方に重心があるところがよい。ちなみに、この友人は、ボクのいる前で、ボクにわざと聞こえるようにいったので、言外には「お父さん(つまりボク)、買い物につれていってあげたら」という意味がこめられていたのである。リテールも、セラピーも、どちらももう日本語として定着しているから、このフレーズは、そのまま日本語としても十分通用するね、きっと。
次にcute proof。これだけ聴いたのでは何のことかちょっとわからないが、解説をきくとなるほど、と納得する。ご存知のとおりsound proofというと「防音」ということ。またwater proofというと「防水」のこと。つまり、proofという単語には、何かを防ぐという意味がある。では、cute proofとは何のことか。Cute を防ぐ?ボクの娘は、夏の間、小さな子供たちに自転車の乗り方を教える野外学校pedal heads(この名前もなかなか気が利いている)でアルバイトをしていた。そういうところに来る子供たちは、一見とっても可愛い(cute)。しかし、一見可愛くても、いざ接してみると、モンスターのような子供も中にはもちろんいる。だだをこねて練習しなかったり、周りの子供たちに迷惑をかけたり、練習中にお漏らししてしまったり。で、娘は、自分は最近cute proofになった、というのである。つまり、cuteな外見にはだまされないようになった、という意味。しかし、ここにくる子供たちは、本当にかわいいです。
3番目は、この夏の間じゅうラジオで流れていたハナ・モンタナの曲の歌詞の一節。If you mean it, I’ll believe it. If you text it, I’ll delete it。前にも書いたが、 Textingとは、携帯でメールをやり取りすること。気持ちを告白するときは、メールではなく、ちゃんと面と向かっていいなさい、という意味がこめられている。彼女がなぜ人気があるのか、ボクにはまったく理解できないが、この一節だけは、当世の若い人たちの心をよくつかんでいると思った。
さて、最後。We aim to please, so you aim, too, please。しばらく行っていなかったら、いつの間にか、cliffhangerという、屋内でロッククライミングができる施設が、新しい場所に引っ越していた。今年、たまたまその新しい方へ行ったとき、そういえば、引っ越す前の場所の男子トイレの中(というか便器の上)には表記のフレーズをいれた可愛い絵がかかっていたっけ、と思い出した。いやー、実に気の利いたフレーズでしょ、これ。で、ボクはこの絵がいまでもかかっているか、楽しみにして男子トイレに入ったのですが、もうありませんでした。残念でした。