« 2008年07月 | メイン | 2008年09月 »

2008年08月27日

Clever phrases

北米に長い間過ごした経験のある人なら誰でも経験することだと思うが、こちらではときどき思いもよらない場面で、なかなか気の利いた英語の表現に遭遇する。この夏も、ボクはそういう表現にいくつも出会った。こういうのも、記録にとどめておかないと忘れちゃうので、紹介しておこうと思う。
まずはretail therapy。恋の病にとりつかれた娘に対して、仲のよい友人がYou need a retail therapyと慰めていたのを聞いて、うまいことをいうなあと思った。日本語でいうと、ストレス解消のための買い物、ということだが、買い物ではなくセラピーの方に重心があるところがよい。ちなみに、この友人は、ボクのいる前で、ボクにわざと聞こえるようにいったので、言外には「お父さん(つまりボク)、買い物につれていってあげたら」という意味がこめられていたのである。リテールも、セラピーも、どちらももう日本語として定着しているから、このフレーズは、そのまま日本語としても十分通用するね、きっと。
次にcute proof。これだけ聴いたのでは何のことかちょっとわからないが、解説をきくとなるほど、と納得する。ご存知のとおりsound proofというと「防音」ということ。またwater proofというと「防水」のこと。つまり、proofという単語には、何かを防ぐという意味がある。では、cute proofとは何のことか。Cute を防ぐ?ボクの娘は、夏の間、小さな子供たちに自転車の乗り方を教える野外学校pedal heads(この名前もなかなか気が利いている)でアルバイトをしていた。そういうところに来る子供たちは、一見とっても可愛い(cute)。しかし、一見可愛くても、いざ接してみると、モンスターのような子供も中にはもちろんいる。だだをこねて練習しなかったり、周りの子供たちに迷惑をかけたり、練習中にお漏らししてしまったり。で、娘は、自分は最近cute proofになった、というのである。つまり、cuteな外見にはだまされないようになった、という意味。しかし、ここにくる子供たちは、本当にかわいいです。
3番目は、この夏の間じゅうラジオで流れていたハナ・モンタナの曲の歌詞の一節。If you mean it, I’ll believe it. If you text it, I’ll delete it。前にも書いたが、 Textingとは、携帯でメールをやり取りすること。気持ちを告白するときは、メールではなく、ちゃんと面と向かっていいなさい、という意味がこめられている。彼女がなぜ人気があるのか、ボクにはまったく理解できないが、この一節だけは、当世の若い人たちの心をよくつかんでいると思った。
さて、最後。We aim to please, so you aim, too, please。しばらく行っていなかったら、いつの間にか、cliffhangerという、屋内でロッククライミングができる施設が、新しい場所に引っ越していた。今年、たまたまその新しい方へ行ったとき、そういえば、引っ越す前の場所の男子トイレの中(というか便器の上)には表記のフレーズをいれた可愛い絵がかかっていたっけ、と思い出した。いやー、実に気の利いたフレーズでしょ、これ。で、ボクはこの絵がいまでもかかっているか、楽しみにして男子トイレに入ったのですが、もうありませんでした。残念でした。

2008年08月22日

Vancouver Unitedの赤と黒

午後5時半。
まだ、ほとんど選手たちは到着していない。
ボクは、ゴールポストにネットを張り始める。
白いプラスチックのバケツ。その中には、ネットを芝生に留めるための黄色いペッグが10数本と、そのペッグを打ち込むためのハンマー、そしてサイドネットの張りを良くするための赤いリボンが入っている。それらを一度全部外に出し、空になったバケツを逆さまにする。その上にのって、ゴールポストの上側の留め金に、ひとつひとつネットを引っかけていく・・・。
フィールドを振り返ると、コーチたちは、今日の練習のための打ち合わせをすませ、青やピンクのコーンを等間隔に置いてまわっている。
今年のVancouver United U-17女子チームは、コーチ陣がかつてなく充実した。ヘッドコーチのほかに、アシスタントコーチが3人。キーパー、オフェンス、ディフェンス、そしてフィットネスと、それぞれの担当がきっちり決まっている。
ボクがネットを張り終える頃までには、赤と黒のユニフォームを着た選手たちが、次々に到着している。芝生に車座になって、スパイクの紐をしっかり結びなおしたり、ストレッチしたりしながら、みんなで一時のおしゃべりを楽しんでいる。時々、あたりの静寂をつらぬく笑い声が、空に響く。
北米の一年のサイクルは、9月のレイバー・デイを基準にして始まる。レイバー・デイが過ぎると、サッカーシーズンもいよいよ本番を迎える。だから、8月の中旬から、選手たちは、夏休みでダレ切った身体を絞り込むために、ほとんど毎日のように、練習にはげむ。6時から8時まで、みっちり2時間。チームの当面の目標は、レイバー・デー前に前哨戦として組まれている親善トーナメントで、よい成績を収めることである。
いよいよ、練習が始まった。
赤と黒。黒と赤。めまぐるしく選手たちが動いている。
ときどき、コーチたちがその動きをピタリととめ、指示を出す。
そしてまた、赤と黒、黒と赤。赤と黒、黒と赤・・・。
ボクの娘は、VUの年齢別代表にこれまで6年間連続して選ばれている。6年ずっと選ばれているのは、ほかに5人しかいない。一緒にMFを組む運動量豊富なブリアナ、レフティーでディフェンスの要のヘイリー、堅実なプレイが定評でPKをはずさないサラ・L、背が低いのにヘディングシュートのうまい意外性のサラ・M、そして天才キーパーであるにもかかわらずFWをやりたがるグレタ。みな類まれな女性アスリートたちであり、その一方でまた、みなごく普通のティーンエイジャーでもある。
3年前、VUは、レイバー・デーのトーナメントで優勝した。しかし、残念ながら、このところの成績はかんばしくない。本番のシーズンでも、なかなか勝てず、最近は負け犬チームのレッテルさえ貼られている。州の島部にはいくつも強いチームがあるし、ライバルの隣町バーナビーもなかなか侮れない。
今年は、コーチ陣が充実したし、期待できるFWとMFの新たな戦力も加わった。だからなんとか、リベンジを果たしてもらいたいものだ。Go red! Go black! Go~~ Vancouver United !!!